オバマ大統領のことを「テフロン大統領」と揶揄する声もあります。テフロン加工されたフライパンのように、批判されても傷がつかないからです。そうした彼のイメージと、CIAによる秘密裏に行われる戦闘によって、オバマ大統領の戦争はどんどん見えなくなってしまっているのです。
――今後のアフガニスタン情勢についてどう考えますか?
大治氏:いまですらアフガニスタン全土の8割以上をタリバンが掌握している状況ですから、14年に米軍を含めたISAF(国際治安支援部隊)がアフガニスタンを撤収する頃には、さらにタリバンの勢力が増すのではないでしょうか。
もうひとつ、実は現在アフガニスタンで大きな問題となっていることがあります。ISAFがアフガニスタン治安部隊の教育・訓練を行っているのですが、その中にタリバンが紛れ込んでいて、ISAFの教官を攻撃するという事件が増えているのです。ISAF側も、募集事務所で荷物検査を徹底したり、兵器の管理を厳重にしたり、最初の応募段階で怪しい人物は排除したりと懸命に被害を食い止めようとしています。ただ、アフガニスタン市民の中には、半分タリバンであったり、いままではタリバンではなかったが急にタリバンになる人もいるので、スクリーニングすることが非常に難しい状況です。
そのような状況で、ISAFも治安当局の教育を一時的に凍結しています。アフガニスタンの治安当局の育成は想像以上に遅れています。アメリカは、治安当局を独り立ちさせ、14年に全面撤退すると言っていますが、このままでは戦争で破壊し尽くし、治安当局さえも育成しないまま撤退することになりかねません。
大治朋子 (おおじ・ともこ)
東京生まれ。1989年毎日新聞入社。阪神支局、『サンデー毎日』編集部、東京本社社会部、英オックスフォード大学留学(ロイター・ジャーナリズムスタディー・フェロー)等を経て2006年~10年、ワシントン特派員、現在は東京本社外信部編集委員。2002・03年の新聞協会賞をそれぞれ受賞。2010年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書に『少女売春供述調書―いま、ふたたび問いなおされる家族の絆』(リヨン社)、共著『個人情報は誰のものか―防衛庁リストとメディア規制』(毎日新聞社)、『ジャーナリズムの条件1 職業としてのジャーナリスト』(岩波書店)などがある。
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