急速に高まる台湾海域での軍事的緊張
台湾海峡をめぐっては、本年4月の日米首脳会談の共同声明は、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を特記し、両岸問題の平和的解決を促す、との文言を入れた。日米首脳間の共同声明に台湾が明記されたのは1969年以来はじめてのことである。このような日米間の合意は、6月の英国コーンウォールでのG7サミットにも受け継がれた。
最近、台湾周辺海域において、中国の多数の軍用機が周回したり、米中双方の空母がほぼ同時期に軍事演習を行ったりして、米・中・台の間の軍事的緊張は急速に高まりつつある。
中国の台湾に対する軍事的侵攻の可能性をどう見ればよいのだろうか。米国のインド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノは「中国の台湾侵攻の脅威は深刻である。多くの人が理解しているより差し迫っている」と述べ、注目された。ただし、その後、米統合参謀本部議長ミリーは「中国が台湾全体を掌握する軍事作戦を遂行するだけの本当の能力をもつまでには、まだ道のりは長い」と語っている。
仮にもし将来、台湾周辺海域や台湾において、軍事的に「有事」が発生し、米軍(在日駐留米軍)が台湾防衛のために出動するという事態が起これば、日本としては、安保関連法を踏まえ、米軍支援のために自衛隊を出動させるという事態を迎えることになると考えられる。それは、前記日米共同声明の趣旨に副うものであり、日本の負うべき国際的責任がそれだけ増大することを意味するものとなろう。
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