2024年7月15日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年11月19日

チベット同様、日本にも全面対決姿勢

 筆者が思うに、このような出世の経歴を持つ胡錦濤氏にとって最大の価値は、中共という組織の維持拡大を通じ、中国の富国強兵と圧倒的な国際的存在感を達成することそのものであるのではないか。中国ナショナリズムの大義を実現させるためであれば如何なる抑圧的手段をも行使するし、あるいは「政治改革」「和諧=調和ある道徳的支配」という旗を立てかけて世人の好意や関心を集めもする。最早国家資本主義化した現体制に合わない毛沢東思想の党規約からの削除すら、彼にとっては必ずしも矛盾ではないだろう。

 しかし、中国ナショナリズムの根本的出発点である「弱肉強食の世界で逆転を狙う弱者」としての認識は、胡錦濤氏によっても変え得ない。むしろ、彼こそこの教義に最も忠実な人物である。「核心的利益」と位置づけた領域・空間を維持拡大することにおいて、あるいは中国ナショナリズム史上最大の敵としての刷り込みに余念がない日本との関係において齟齬が生じたとき(尖閣問題はこの二大争点が重なっている)、胡錦濤氏はチベット人に対し妥協しなかった能力を見込まれて鄧小平氏に引き上げられたのであるから、かつてチベットに対して振るったのと同様、日本に対し全面的な対決姿勢をとるのは当然すぎることなのである。逆に言えば、中共にとっての日本との関係とは、このような原理原則と抵触しない限りのものであるに過ぎないし、胡錦濤氏の後継者たちも全く同様に、ナショナリズムの大義に忠実であり続けるだろう。

 これに対し、日本が中国に揺さぶられるままに外交努力や国力維持の努力を欠き、今後も引き続き国際社会での存在感を減らしてゆくならば、中共が1950年代にチベットに対して行ったのと同様に武力を動かし、あらゆる面で日本を圧倒しコントロールするようになるとしても不思議ではない。主権をめぐる問題で対中宥和を唱える人々は、「統一戦線工作」のもとで一時優遇され、「日本人民の正義の声」として持ち上げられるだろうが、ついに日本外交が中共に従属し、既成事実の積み重ねで尖閣のみならず他の領土も失うとしたらどうなるか。それこそ日本にチベットと同じ悲劇を引き起こすことに他ならない。彼らもやがて中共(いや、中国ナショナリズムが弱肉強食・ゼロサム的な発想をとり、反日を鼓舞し続ける限り、中共ではない勢力が台頭しても同じことである)によって不要な存在扱いされることになるだろう。この運命を避け、平等互恵を旨とする国際社会の理解を勝ち取るためにも、あらゆる日本国民が立場の違いを超えて協力し、より良い日本を目指すことを、総選挙を控えて切に望むものである。


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