2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2021年8月16日

 中継の醜態は 「五輪の華」と呼ばれるマラソン中継まで続いた。韓国代表として出場したのはケニア出身で、3年前韓国に帰化し韓国代表として活動してきた呉走韓(オ・ジュハン)選手だ。彼が国外出身だということについては何の問題もない。世界トップレベルの陸上長距離の選手たちが多いアフリカの国からは、五輪出場のチャンスを求め、外国籍として五輪に出場するのは珍しいことではないからだ。今回の五輪でもマラソンで2、3位になったオランダとベルギーの選手は二人ともソマリア出身の選手だ。

 マラソンは韓国の地上波3社が同時中継をしていた。韓国においても注目の競技だったのだ。問題は韓国選手がレースの途中、体調を崩しリタイアしたことが引き金となった。韓国選手がリタイアすると、ある放送局のアナウンサーは「(期待に)冷水をさした」とコメントした。

 そして3社が同時に中継を他の種目に切り替えたのだ。韓国選手がリタイアしたとはいえ、韓国にもマラソンのファンがいて、五輪の華とも言われる種目だ。それを入賞の可能性がないと言ってすぐ切り捨てる放送局の態度には視聴者も呆れ、ネット上には批判の声が殺到した。スポーツを通して友情、連帯感、フェアプレー、平和を実現するという五輪の精神とはあまりにもかけ離れた光景だった。

「スポーツ」に限られた問題ではない韓国メディアの態度

 私が見るには、韓国のメディアは結果である「勝利」にだけ関心があり、過程であるの「試合」そのものには関心がないように見える。韓国メディアはそのような報道姿勢で長い間、他者(外国)の姿を国民に伝えてきた。

 日本についてもそうだ。スポーツの日韓戦のみならず、ほぼあらゆる分野にわたり、今回のオリンピック中継のような報道姿勢で、日本の姿を韓国社会に伝えてきた。そして、そのような報道姿勢が多かれ少なかれ日本に対するステレオタイプ、つまり韓国人の反日感情の形成に影響を与えたと言える。

 今回、韓国の五輪中継を見て唯一の救いと言えることがあるなら、テレビ局の偏向的で、敬意の欠いた放送姿勢についてSNSやニュースのコメント欄で強い違和感を訴える韓国人が多かったということだ。一度覚えるようになった違和感は簡単には消えない。今後もメディアの報道には疑いの目で、懐疑的に向き合うことになるだろう。まだ少数派に留まっているかも知れないが、違和感と反感を覚えた韓国人が少なくなかったことに、私はメダルの数よりホッとしている。

   
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