2022年11月30日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年8月23日

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 まず、米国史上最長となる不毛な戦争に終止符を打った。カブール陥落という米国にとり不面目で衝撃的な幕引きを迎えたにもかかわらず、米国がアフガンから手を引き、大国との競争、とりわけ中国との対立に集中する意思を表明し、そういう態勢を目指すことを示すことができたことの意義は重視されるべきである。

 サイゴン陥落を想起させるというが、フィナンシャルタイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンがカブール政権崩壊直前の8月13日付け同紙掲載の論説‘Joe Biden’s credibility has been shredded in Afghanistan’で指摘する通り、サイゴン陥落の14年後に冷戦に勝利したのは米国である。

忍び寄る中国の影は脅威なのか?

 中国は確かに「一帯一路」にアフガンを取り込もうとしている。中国・パキスタン経済回廊(CPEC)のアフガンへの延長を模索しているらしい。これは地政学的に重要なことである。7月末には、王毅外相が天津でタリバンの共同創設者アブドゥル・ガニ・バラダルら幹部と会談している。この際、米軍のアフガン撤収について米国の失敗を言い立て、中国はアフガンの主権独立と領土安全の尊重や内政不干渉を徹底するとして、来るべきタリバン政権に中国を売り込んでいる。

 中国のアフガンへの関与についても、前出のラックマンの論説が参考になる。ラックマンによれば、一つには、中国による新疆ウイグルのムスリム弾圧へのタリバン側の反応がどうなるのか頭痛の種になるという。もう一つは、混沌としたアフガンに軍事的に介入すべきか、それとも自助努力に任せるかという、「古典的な超大国のジレンマ」に陥ることだという。これは米国が陥ったジレンマに他ならない。アフガンの部族主義にも直面しよう。中国にとりプラスになるかマイナスになるか、現段階で判断するのは時期尚早であろう。

 仮に中国がパキスタン、タリバン政権下のアフガンと「一帯一路」を推進することになれば、これはパキスタンおよび中国と敵対するインドの警戒、インドとの対立を招く。新たな地政学的局面を迎えると言ってよい。こうなった場合、米国はインドを支援するであろう。インドはインド太平洋戦略の柱の一つである重要な大国である。アフガン情勢は今後ともとりわけ地政学側面から注視していく必要がある。

  
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