AUKUS運用への数々の課題
AUKUS合意を受けて、関係三国は事務レベルでプロジェクトの詳細の検討に入っているものと思われる。今後莫大な難しい問題を解決していく必要がある。これから種々紆余曲折があるように思える。問題を幾つか挙げれば次の通りである。
(1)如何なる原潜を誰が建造するのか。母港整備を含むインフラをどこに建設し、保守など高度な原子力人材を如何に確保し、維持するのか。
(2)コストの配分はどうするか。豪州にとっては通常潜水艦より高額の資金が必要になるだろう。リース方式を検討するのか。
(3)豪州の現有コリンズ型潜水艦の退役(退役は2026年頃からと言われていた)と新艦就航(2030年代後半以降予定)の時間的ギャップをどうするか。コリンズ型の延命措置も検討されているようで、その場合は遅いもので2050年代まで就役することになるという。
(4)NPTとの関係、IAEAとの関係も問題となる。非核保有国による原潜保有の初めての事例になる。IAEAは既に実体的、法的検討を開始している。原潜建造に関心を持つイランなどが注目しているようだ。イランの他、カナダ、韓国(先年韓国は米国に協力を求めたが米国は拒否したと言われる)、ブラジルが原潜建造に関心を持っている。IAEAのグロシ事務局長によると、セーフガード措置から外した核燃料の核兵器転用阻止を如何に確保するかが最大の問題になる。
(5)米国内の反対論を抑えられるか。米海軍は技術移転に当初慎重だったという。既に専門家などがバイデンに反対の書簡を送付した。
日本は、豪州の潜水艦受注に関して、かつてフランスやドイツと争い、結局受注がフランスに決まったという経緯がある。今回、AUKUSには入っていないが、自由で開かれたインド太平洋戦略の中で、何らかの形で連携ができたら良いだろう。