恐らく、米国のミサイル防衛網を突破することが中国の重要な動機であろう。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の増強の動きにも反映されているが、核戦力を全体として増強する意図のようである。
気になる米中露の関係
実戦配備に至るかどうかは分からないが、この動きは戦略環境を不安定化させるものに違いない。折からバイデン政権の「核態勢の見直し(Nuclear Posture Review)」 が進行中であるが、搭載出来る弾頭はICBMに比較して小さくならざるを得ないこと、今後の米国のレーダー網や迎撃ミサイルの能力向上との関係をどう見るかなど、中国の実験の意味合いが検討されることになろう。
ロシアとの間では、6月のバイデンとプーチンの首脳会談の合意に基づく「戦略的安定対話(Strategic Stability Dialogue)」が7月に始まっている。中国の動きは米国をして将来の戦力に制約を課すことを躊躇させ、軍備管理の進展を阻害しかねないという問題がある。
他方、ロシアも中国の昨今の動向に無関心でいられるはずはない。2026年のNew START条約の失効後を睨んだ軍備管理の協議に中国を引き込み得る可能性は現段階ではないが、核兵器の分野で中国と対峙する上で、ロシアとの協力の可能性を探る努力は有益たり得るであろう。