2024年4月27日(土)

田部康喜のTV読本

2021年11月13日

 「偽装結婚から友達に昇格かぁ」と、つぶやく明葉は、百瀬に対する「不毛の愛」に落ちていった。(不毛な恋をやめるためにも、百瀬さんとは友達になる)と、心のなかで自分に言い聞かせるのだった。

 「初めて、女性の友達ができた」と、喜ぶ百瀬は、明葉の気持ちを考えずに、どんどん友達づきあいをしかけてくる。「友達感覚」の百瀬と、「秘めた恋」を抱く明葉のセリフのやりとりのズレが、このドラマのひとつの魅力になっている。

 百瀬は「取引先からもらったという、箱根温泉の日帰り旅行券を使って旅行に行こう」と明葉を誘う。てっきり、ふたりだけの旅行だと勘違いした、明葉は旅行雑誌を買い、二人分の飲み物を買う。ところが、実際は、兄夫婦との4人旅行だった。

 そして、日帰り旅行から帰ってくると、百瀬がすっかり意気消沈している。(友達だから、励まさなきゃ。こんなときは、とことんお酒を飲むか)と、明葉。しかし、いくら飲んでも、百瀬の表情のカゲは変わらない。

 「もっと飲みましょうよ!」という明葉に、百瀬は「あなたがこんなに酒癖が悪いとは思いませんでしたよ」

ミステリーの隠し味も

 「女性とつきあった経験がないのでは?」という明葉には、「愛がなくてもできることはできますよ」と百瀬は、明葉の唇を奪おうとする。すんでのところで、自分の部屋に逃げ込む明葉。「あんなことされたら、本当に好きになっちゃう」。

 百瀬の気持ちが沈んでいたのは、箱根の旅行先で、愛している兄嫁の美晴(倉科)から、予想もしない言葉を聞いたからだった。

 「わたしは、旭(前野)君とだったら、ほころびのない、完全な家庭をつくれると思って結婚したの。こんな女だって、知ってがっかりした?」

 明葉はそんな百瀬にこんな言葉を投げかける。幸せそうに見える美晴も、打算的だと思われる美晴も同じ人物だと。

 「好きになるって、勝手なことを考えることなん」

 百瀬は答える。

 「ありがとう。あなただから一緒にいられるんだ」

 明葉は、「偽装結婚」の禁断の言葉をいうのだった。

 「掟を破って、あなたを好きになったら、これでおしまいですか?」

 そのとき、百瀬の家に、兄の旭が飛び込んでくる。美晴が家出をしたうえに、「離婚届」を残したのだった。

演技が光るわき役陣

 ドラマは、ラブ・コミックをベースにしながらも、美晴の失踪によって、ミステリーの隠し味も加わって、今後の展開がとても楽しみな作品になりそうである。

 ドラマは、わき役陣もそろっている。百瀬が最初に「契約結婚」を持ちかけて、断られたのに、明葉の前に頻繁に現れる、百瀬の会社の受付嬢・麻宮祥子役に深川麻衣。乃木坂46のメンバーだった彼女も、映画でも活躍する女優に成長している。

 明葉が「偽装結婚」をしていることを知りながら、ちょっかいを出してくる、牧原唯斗役に高杉真宙。黒沢清監督の映画「散歩する宇宙人」(2017年)のまさに、人間の肉体を乗っ取って殺りくを繰り返す宇宙人役は、出色だった。

   
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