「婚姻届に判を捺しただけですが」(TBS・火曜よる10時)は、坂口健太郎が清野菜名と「偽装結婚」するラブ・コメディである。大手広告代理店に勤める、百瀬柊(健太郎)は、中学校時代の同級生で兄・旭(前野朋哉)と結婚した、美晴(倉科カナ)を愛するがゆえに、かなわぬ夢をあきらめる「偽装結婚」相手を探していた。
デザイン会社で働いている、大加戸明葉(清野)も、「偽装結婚」の理由も告げられないままに、百瀬(健太郎)から持ちかけられた。あまりにも、バカバカしい話なので、いったんは断った明葉だったが、実家の小料理屋を継続するために500万円が必要になる。
「わたしの人生を500万円で、百瀬さんに預けます」-ふたりの結婚生活が始まるのだった。清野菜名は、NHK朝の連続小説「半分、青い。」(2018年上期)で、ヒロインの永野芽郁の友人役で“全国区”になった、可憐な女優である。
清野の俳優としての背骨ともいえる、演技の中核には実は、「アクション俳優」としての存在がある。映画「TOKYO TRIBE」(2014年・園子温監督)や、ドラマ「今日から俺は!!」(2018年・日テレ)などに、男優を圧倒する演技をみる。
若手俳優の実力派である、健太郎を相手にして、テンポのよいセリフをポンポンと発していく様子をみると、アクション俳優の鍛えられた体幹を感じる。
「友達感覚」と「秘めた恋」のズレ
百瀬(健太郎)はついに、明葉(清野)に「偽装結婚」の理由を告白して、兄嫁である美晴(倉科)に対する愛を明らかにする。涙を流しながら。明葉(清野)は、そんな百瀬をそっと抱きしめる。
「友達のハグです」と。
「偽装結婚」の結婚届を出すのに際して、百瀬はいくつかの約束を盛り込んだ「契約書」をつくった。「相手のことに深入りしないこと」「お互いを好きにならないこと」……。
百瀬は、明葉にハグされた翌朝から、態度が一変する。「友達ですから」を連発しながら、明葉とゲームをしたり、食事をいっしょに食べたりし始める。