かたや党中央宣伝部は新聞界に、南方週末支持が広がれば、「共産党がメディアを支配する」体制が一気に瓦解すると心配したのだろう。7日夜、各メディアに緊急通知を発した。
そこに共産党の強権体質がにじみ出た。今回の問題に「海外の敵対勢力が介入している」と記者をけん制するとともに、「政府に公然と歯向かえば、必ずや敗者になる」など強硬論を展開した7日付共産党機関紙・人民日報系の環球時報の社説を転載するよう指示したのだ。環球時報は4日付で南方週末事件を「冷静に考える必要がある」との社説で「メディア管理の大きな流れは変わっていない」と論じており、環球時報も「方向転換」を迫られていた。
強硬社説転載を拒否した新京報
8日付の主要紙には次々と、7日付の環球時報社説が転載されたが、2011年9月まで南方週末と同じ南方報業メディア集団に属し、首都・北京で独自の紙面を展開した新京報は、中央宣伝部の意向に歯向かう。8日付で転載を拒んだ。そこで乗り出して来たのが、劉雲山の意を受けた北京市宣伝部の厳力強副部長だった。
厳力強が新京報本社にやって来たのは8日午後8時半。新京報の戴自更社長に対して「転載を拒めば解散させる」と脅した。もう既に深夜になり、決断を迫られる中、記者らよる民主的投票を行うことになった。結果は全員が「拒否」。戴氏は「自分は社長を辞める」とまで漏らし、最後まで抵抗したが、結果的には掲載を余儀なくなされた。新京報社内には悔しさの余り、すすり泣く記者の写真が微博にアップされ、次々と転送された。
「暗黙の抗議」中国紙に広がる
しかし新京報は紙面で「暗黙の抗議」を行う。中国メディア関係者はこう明かす。「環球時報の記事を圧縮して小さな記事を目立たない隅に掲載した。よく見ると、掲載したページの欄外には、通常の紙面には掲げられている編集責任者の氏名が記載されていない」
さらにこの日の紙面のグルメ欄には「南方的粥」(南方がゆ)が取り上げられ、「勇敢な心」「今年は最近数十年間で最も寒い冬」などと記し、厳しい言論弾圧に声を上げた記者に暗に声援を送った。