2022年10月8日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年12月17日

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 11月21日のチリの大統領選挙で左右両極端の候補が決選投票に進むことになったことは、決選投票で何れが勝つにせよ、和解によりコンセンサスを形成して国家の発展を可能としてきたチリの国の在り方を変えてしまう恐れがある。そうなった背景に、市場主義経済により貧困も減少したが、それ以上に格差が拡大し、その後の経済的停滞の中で格差を放置した政府或いは政治そのものに対し国民の不満が爆発し、治安も乱れたことが大きい。

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 国民は分断され、共産党に支持された左派候補のボリッチは富裕層への増税と資源の国有化を主張し、極右候補のカストは減税と徹底的な治安の維持を主張しており、いずれが政権を取ってもその公約実現を巡る国内の混乱が予想される。特に、カストの政治主張は、ボルソナーロによく似ており、もし当選すれば南米の第2のトランプとなる。

 そして問題は、これがチリだけの現象ではないということである。来年、大統領選挙を迎えるコロンビアでは、元ゲリラの左派候補とトランプ張りの右派候補が有力となりつつある。加えて、来年10月のブラジルの選挙も再選を狙うボルソナーロと返り咲きを狙うルーラの二極対立となる可能性が高く、未だに有力な第三の中道候補が浮かび上がってきていない。

 同様の状況がアルゼンチンほかの国々でも生ずる兆しがあり、ラテンアメリカに共通の現象になりつつあるが、これはラテンアメリカに限ったことではなく、世界的な傾向とも言えるかもしれない。

 慢性的な経済的困難、治安の悪化、汚職の横行、移民の流入、加えて新型コロナ感染の拡大などの困難な状況に効果的に対応できない政権や既成の政党に対する失望や反感から、国民が既成政治を批判するアウトサイダー政治家や大言壮語するポピュリスト政治家に期待を持ってしまう現象である。

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