日本の漁業は崖っぷち

2013年1月22日

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 カナダの場合は、マダラの禁漁で多くの人が職を失うことになってしまいました。しかし、ズワイガニ、ロブスター、ホッキ貝、カラスガレイ等を始めとする他の水産物においても、厳格な漁獲枠の設定と資源管理を行うことで、全体として資源は安定しています。農業であれば、農地に新たに種を蒔いたり、肥料をやったりすることで農作物を増やすことができますが、天然魚のマダラの場合は、稚魚を放流しませんし、えさもあげられませんので、回復にかなりの年月がかかっています。しかし、回復後に資源管理をきちんとしていけば、手をかけずに作物(=魚)を持続的に獲り続けられるのです。

資源管理費用
TACの一部を調査枠として漁船に配分を

 資源を管理して魚が成長し、増え続けるようになれば、管理費用など問題ではなくなります。資源管理がしっかりしている国々では、逆に漁業者の方から積極的に調査に関与してくるのです。

 日本でもしも科学的な調査の限界の話があるとしたら、それは非常に残念な話です。日本の水産業に関する科学的な潜在能力は高いと信じておりますが、わからないことは、ノルウェーを始めとする北欧の科学者に聞けばよいのです。彼らは喜んで協力してくれます。調査方法が分かれば、世界最高水準に追いつけるはずです。日本では、単一魚種を大量に獲る巻網漁船を対象に、主要10魚種の資源調査をしてTACを設けるだけでも、総水揚げの約7割はカバーできます。できない理由を探すより、やる気があれば、日本でも北欧式の管理ができ、その効果を十分に享受できるのです。

(図5)資源調査中のアイスランド
5隻の漁船がアイスランド近海の資源を調査中。赤と青の2隻が資源調査船。積極的に漁船も協力します。 (出所:Marine Research Institute アイスランドMRI)
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 (図5)は、アイスランドでの資源調査船の動向です。通常は、国の調査船2隻で調査しています。状況に応じて漁船が調査に加わり、より広範囲の漁場を調査して、資源調査を行っています。図では、5隻で調査しています。オランダでも漁業者が、資源調査に自船を使用することを積極的に申し出ています。

 調査には費用がかかります。しかし、厳格に資源管理を行っている国々では費用を捻出する方法があります。TAC(漁獲枠)の一部を調査枠として漁船に配分するのです。調査の時に獲った漁獲物を漁船に与えるということです。しかし、今の日本の制度のように、一度決めたTACを後で増やしてしまうようなやり方では、調査枠として個別の枠をもらったところでほとんど意味がありません。漁獲枠=漁獲量の原則が守られる常識的なTACと個別割り当てが機能する環境であれば、漁業者は我先にと調査に協力してくれるでしょう。やる気と意思があれば、方法はあるので改革はできるのです。

 なぜ、日本は依然TAC魚種を7種から増やすことに難色を示しているのに、米国は2012年に、漁業対象の全魚種の528魚種にTACを広げたのでしょうか? 理由は簡単で、米国はTACで管理した方が、将来の水産業のためになると真剣に考えたからなのです。北欧も米国と同様ですが、日本とのこの違いが、成長か衰退かの分かれ道となってしまうでしょう。

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