2022年12月5日(月)

ニュースから学ぶ人口学

2021年12月24日

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社会統合の制度設計なしに新たな文明はない

 東日本大震災が起きる直前の2011年2月に、筆者は外務省や国際移住機関(IMO)などの共催による会議「外国人の受入れと社会統合のための国際ワークショップ」にコーディネーターとして関わったことがある。

 受け入れに慎重な立場、積極的な立場の双方から討論者を招いて議論したが、国民的理解と合意のもとで受け入れを進めること、日本の社会全体の方向を示すグランドデザインを明確にすることが必要であることが共有された。また日本語の習得促進などを通じて社会統合を推進すること、医療や社会保険など外国人の権利を保証する仕組みが必要であることなども課題として指摘された。

 極めて低い難民認定率、入管施設に収容された外国人に対する非人道的な扱いなど、日本の出入国管理体制が抱える問題は少なくない。それでも日本はゆっくりと、外国人に対して開かれた国に変わりつつあるように見える。2021年12月、東京都武蔵野市議会では、日本人、外国人を問わず、市内に3カ月以上住む、18歳以上のものに住民投票を認める条例案をめぐって審議が行われたが、採決の結果、否決された。条例案が発表されてから、ヘイトスピーチまがいの批判が街宣活動やインターネット上で行われて話題となったが、外国人への投票権付与は避けて通れない問題である。

 増加を続けている技能実習制度にしても、技術移転を通じて発展途上地域の人づくりに寄与することを標榜しているものの、賃金、労働時間、安全配慮などの面で違法行為が多発していて問題になっている。転職も認められていないため、失踪してしまうケースも少なくない。国際的に現代の奴隷労働と指摘されているのが実情だ。

 経済協力開発機構(OECD)統計によると日本の労働者の平均賃金は過去20年間、ほとんど上昇していない。既に韓国を下回っている。賃金が上がらないだけではなく、企業間格差が拡大しているようだ。

なし崩しの外国人労働者受け入れ枠拡大は誤り

 受け入れ慎重派が案じたように、低賃金の外国人労働力雇用の拡大が影響しているのだろうか。岸田文雄首相は企業に対して賃上げを働きかけようとしているが、低賃金と低い生産性の背景には何があるのかについて検証する必要がある。低賃金構造は外国人労働力の受け入れにも影響する。生産年齢人口減少は今後、新興工業国へも拡大すると予測されているからだ。

 歴史を振り返ってみると、異質な人材の交流は新しい文明が誕生する際に、極めて重要な要素であった。しかし社会統合の制度設計もないままに、その時々の必要に応じてなし崩し的に外国人労働者の受け入れ枠を拡大していくことは間違っている。

 現在、進みつつある「第4次産業革命」によって「Society 5.0」をどのような社会にしたいのか。そのためにはどのような外国人材を必要とするかを見極めながら、働く場所として日本が選ばれる国になるために、外国人受け入れのグランドデザインを描き、受け入れ体制を整える必要がある。

  
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