経済の常識 VS 政策の非常識

2022年1月11日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 「分配戦略」では看護、介護、保育、幼児教育などの職員の給与を3%引き上げること、人への投資の推進に3年間で4000億円、「下請けいじめゼロ」を目指して下請けGメンを倍増して248人にすると書いてある。

 しかし、介護の給与はこれまでも毎年1.7%から1.9%は上がっていた(介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」(20年8月7日)により、16年から21年にかけて所定内賃金と所定内賃金に賞与を加えたもので計算)。他の職種の給与が上がっているのに、こちらだけ上げない訳にはいかないからだ。新しい資本主義の世界でなくても2%弱上がっていた。すると、「新しい資本主義」で上げる部分は1%程度となる。

 もちろん、予算の23%は国債費に、34%は社会保障に使われ(コロナ予算の影響を受けていない19年度予算の数字)、合わせて57%は使い道をほとんど変えられないので、「新しい資本主義」に当てる予算はあまりないのだが。

コストばかりがかかる「新しい資本主義」

 「新しい資本主義」の中にはコストを上げる方策が多い。しかし、コストを上げて経済を活性化することはできない。所得分配を重視するのは良いが、実際の予算支出はわずかである。大きく分配状況を変えることはないが、だから成長を阻害するほど分配に力を入れないのは良いことだという判断もあるだろう。

  
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