「分配戦略」では看護、介護、保育、幼児教育などの職員の給与を3%引き上げること、人への投資の推進に3年間で4000億円、「下請けいじめゼロ」を目指して下請けGメンを倍増して248人にすると書いてある。
しかし、介護の給与はこれまでも毎年1.7%から1.9%は上がっていた(介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査」(20年8月7日)により、16年から21年にかけて所定内賃金と所定内賃金に賞与を加えたもので計算)。他の職種の給与が上がっているのに、こちらだけ上げない訳にはいかないからだ。新しい資本主義の世界でなくても2%弱上がっていた。すると、「新しい資本主義」で上げる部分は1%程度となる。
もちろん、予算の23%は国債費に、34%は社会保障に使われ(コロナ予算の影響を受けていない19年度予算の数字)、合わせて57%は使い道をほとんど変えられないので、「新しい資本主義」に当てる予算はあまりないのだが。
コストばかりがかかる「新しい資本主義」
「新しい資本主義」の中にはコストを上げる方策が多い。しかし、コストを上げて経済を活性化することはできない。所得分配を重視するのは良いが、実際の予算支出はわずかである。大きく分配状況を変えることはないが、だから成長を阻害するほど分配に力を入れないのは良いことだという判断もあるだろう。