2022年7月6日(水)

2021年回顧と2022年展望

2021年12月29日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 2021年の〝年男〟はいうまでもなく、岸田文雄首相、その人だった。

 下馬評を覆して総裁選で完勝、解散総選挙ではこれまた悲観的な予想を覆して実質的な勝利を収めた。22年も〝時の人〟であり続け、長期政権を目指すことができるか?

(代表撮影/ロイター/アフロ)

菅政権を崩壊させた渾身の一太刀 

 21年の自民党総裁選を省みれば、菅義偉政権を崩壊させたのは、岸田氏の一太刀だった。

 総裁選出馬に当たって、「党役員任期は1期1年、連続3期まで」とする公約を打ち出した。

 当時の菅義偉首相は、対抗上、二階俊博幹事長の更迭を決意せざるをえず、これが引き金となって党内の支持を失い出馬断念に追い込まれた。

 前回、19年の参院選で、官房長官だった菅氏、二階幹事長は岸田氏の地元広島に、現職に加え第2の候補を強引に擁立、現職は落選の憂き目を見た。このとき当選したのが後に買収で有罪判決を受け、議席を失った河井案里氏、落選したのは岸田派議員だった。

 「役員任期1年・・」は、二階氏に放った渾身の一撃だった。

 そんなこともあってか、「ケンカが強くなった」などと評される岸田首相、12月の新聞各紙の世論調査を見ると、支持率は一部微減はあったものの、おおむね上昇傾向を示した。

 12月に開かれた臨時国会予算委員会でのやりとりをみると、前任者とは打って変わった丁寧な答弁ぶり。野党議員の質問に対しても、北京五輪開会式への自らの出席見送りを明言するなどのサービスぶりだった。

 コロナ対策での18歳以下への給付金をめぐって方針変更せざるを得なかった不手際に拘わらず、人気が上昇した背景にはこうした誠実に映る態度も影響したのかもしれない。

「新しい資本主義」国民の心つかむか

 しかし、「聞く力」「丁寧な説明」だけで人気は続かない。重要政策課題はコロナ対策だけではなく、前向きな将来への展望、国家目標を国民に示さなければ国民の支持と信頼は得られない。

 小泉純一郎政権の場合は「構造改革」であり、安倍晋三元首相のそれは、「戦後レジームからの脱却」だった。いずれも国民の間で賛否は分かれたものの、基本理念を国民に示し、それなりに実行された政策だった。

 理念、理想を掲げることのできない政治家は、国民の声望、支持を失う。「安倍政治の継承」を唱えるだけで、実現したい政策目標をもたなかった菅義偉前首相が典型的な例だろう。

 総裁選、総選挙を通じて、岸田首相はさまざまな政策目標を掲げた。中でも「新しい資本主義」と「デジタル田園都市国家構想」が2枚看板だ。

 前者は、過度な市場依存によって格差や貧困などの弊害を生んだ新自由主義を排し、経済の付加価値の創出を通じて成長を実現、分配を豊かにするーというのが基本理念だ(2021年12月6日、臨時国会での所信表明演説)。介護、保育などに従事している人たちの所得を引き上げ、賃上げ企業への補助拡大、労働者の学びなおし、ステップアップを図る――。 

 もちろん、それ自体重要なことだが、介護職などの所得増加にしても年間わずか11万円。通常の経済政策の枠内で実行可能な内容であり、「新しい資本主義」などというのは大風呂敷にすぎるというべきだろう。

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