延期になったままの習近平国家主席の来日日程も決まらない中で、一方的に米国に強硬政策に与するのは決して得策ではない。とはいうものの、独自の対応を取れば米国の失望を招き、日米関係はぎくしゃくする。国内の対中強硬派の反発も買う。
2022年の対中政策は岸田政権の外交政策の成否を占う重要な問題になる。
首相脅かす党内対立
こうした重要な政策課題に岸田首相は全力を傾注できる政治的な環境は整っているのか。
できないとなれば、政権運営に支障が生じるが、そうした事態に陥る懸念がある。首相と距離を置く党内の動きだ。強力な政権基盤を欠く岸田政権の不安定さを象徴する悩みでもあろう。
安倍一強の前々内閣、総裁選で各派が競って菅氏を支持した前内閣と岸田政権は大きく異なる。
総裁選の決選投票で岸田氏が河野太郎氏を大きく引き離したのは、安倍元首相が支持した高市早苗氏の票が回ったためだ。党役員人事、組閣で、高市氏を政調会長に、官房長官に安倍氏側近の松野博一氏を起用するなど安倍氏へ配慮せざるを得なかった。
その高市氏は現職の政調会長であるにもかかわらず、テレビ番組に出演した際、ポスト岸田を目指すのかと聞かれ、「もちろんだ」と即座に答えた。「いまは岸田首相を支える」と強調はしたが、現職党役員でありながら、次期首相の座への野心を公言することへの疑問も少なくなかろう。
高市氏は、中国念頭の人権侵害非難決議をさきの臨時国会で採択するよう茂木敏充幹事長に要請、拒否されると「悔しい」と憤慨して見せた。あたかも〝政敵〟のような発言を弄し、政権の手足を縛るような高市氏に、岸田氏が信頼を寄せるなどできぬ相談だろう。
政権にとって、もうひとつの不安要素は、「維新の会」の存在だ。
馬場伸幸共同代表が臨時国会の代表質問で、18歳以下への給付金問題、文書交通費の見直し問題をめぐって岸田首相を激しく批判。補正予算案にも反対した。
維新が補正予算案に反対したのは大阪維新の会時代のへ16年以来という。維新は安倍、菅両氏とは良好な関係を保ってきたが、岸田政権になってからは、対決色を強めている。岸田氏によって退場を余儀なくされた菅氏と良好な関係にある維新の方針転換は、現政権にとってこれまた大きな脅威だ。
岸田氏に敗れながら、総選挙で応援に引っ張りだこで今も国民の人気が高い河野太郎氏の動きも要警戒だろう。その河野氏を総裁選で支持した菅前首相、石破茂元幹事長、二階派の武田良太前総務相らが12月22日に会合を開いたと報じられ、非主流派結束の印象を与えた。