2024年11月24日(日)

ヒットメーカーの舞台裏

2013年2月11日

 最初の粘着プロセスで止まるように原料を調合してできたのが粘着剤BBXだ。もっとも、試作品が完成しても社内の評価は芳しくなかった。くっつけたモノがはがれるというのは、接着力を追求してきたメーカーなので、商品化には慎重論が相次いだ。当然、どの程度売れるかも問われた。

 木村が拠り所としたのは、「新しいものができれば世に問うてみよ」という創業者の製品開発への姿勢だった。両面テープは加工品しか存在しないわけだから、粘着剤だけを液体で提供すること自体「新しい」のである。「用途はお客様が開拓してくれる」。超ベテランの読みは見事に的中した。(敬称略)

メイキング オブ ヒットメーカー木村修司(きむら・しゅうじ)さん
セメダイン 営業統括部 BBプロジェクト

1946年生まれ
東京・神田で生まれ育つ。実家は自動車の販売・修理業を営んでいた。子ども時代は焼け野原での野球、防空壕に入る遊び、模型飛行機作りに熱中した。
1965年(18歳)
早稲田大学商学部に進学。アーチェリー部に所属する。大学3年生のときには、日本代表として世界選手権に出場するまでになった。大学では、マーケティングを専攻していたため、学んだことを活かせる職場を探した。アーチェリーの道具を固定するためにセメダイン社の接着剤を使っていたことが応募のきっかけになった。
1969年(22歳)
セメダイン社に入社。製品企画の部署に配属された。2年目には「バスコーク」という、浴室や水回りの補修に使う防水剤の製品企画を担当した。その後、名古屋支店勤務となり、自動車メーカー向け製品の営業に従事した。
1982年(35歳)
東京の本社に戻り「POSシール」や「PMシリーズ」といった建築用接着剤の製品開発を担当した。50歳前後から事業部長や総合企画部長などを歴任し、開発現場の仕事から離れていった。
2007年(60歳)
定年退職後に継続雇用される。63歳で希望した製品開発の業務に従事した。現在は「最後のご奉公」と意気込んで仕事に取り組んでいる。

(写真:井上智幸)

[特集] ヒットメーカーたちの物語

◆WEDGE2013年2月号より

 

 

 

 

 

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