独立した検視体制がない日本
いずれにせよ、死因調査、解剖、死亡診断書の作成など死に関するすべては独立した検視局が行い、警察が口を挟む余地はない。
異状死の死因究明に警察が当初から関わる日本は、国際的には例外的な存在なのだ。
「日本が参考にしたドイツではどうですか? ドイツは警察主導なのでは?」
「ドイツでは警察と、解剖を行う大学・法医学研究所の間で均衡があり、独立性が保たれています」
日本の場合もう一つ、本書で繰り返し強調されているのは地域による格差である。
広島県では、2018年の異状死体3183体のうち、司法解剖37体、調査法解剖2体で、解剖率は1.2%。実に異状死の99%で解剖による死因究明がされていないのだ。遺体は死者の「最後のメッセージ」なのだが、それが誰にも読み取られていない現実がある。
他に、新潟・群馬・大分県が3%台で低く、東京都は17・2%で全国のトップクラスに位置し、沖縄県22・5%がその上を行く。
「解剖を担う法医学者もいろいろです。大半は使命感を持って、開業医の何分の一かの収入でも懸命に職務を果しています。でも、中には研究に専念したい人もいるし、警察と揉めて解剖が滞る場合もある。その人がどこで亡くなるかで、死因が究明されるか、されないか、その割合が違ってきます」