インテリジェンスと法医学の共通点
ところで著者の山田さんといえば、海外留学や外国通信社勤務などの経歴を生かし、スパイ関連やCIA工作など国際情報戦略に関する著書を主に執筆してきたジャーナリスト。
その人が、なぜ畑違いの法医学問題に取り組んだのか?
「2008年に雑誌の取材で、千葉大医学部の岩瀬博太郎先生に会い、日本の死因究明体制の構造的欠陥を知ってしまったんです」
その前年、時津風部屋の暴行死事件があった。警察発表は虚血性心疾患だったが、遺族の希望で新潟大医学部で解剖したところ暴行による死亡と判明。親方や兄弟子らがその後有罪判決を受けた。
「その事件の社会的インパクトもあって、以降インテリジェンス関連の仕事と並行して、法医学分野の取材も進めてきました。アメリカで法医学界の第一人者、トーマス野口氏と知り合い学会などにも出席しました。発表こそしてきませんでしたが、10年以上の基盤があります」
「インテリジェンスと法医学、2つの領域で共通点はありますか?」
「そうですね。表に出にくい分野、ですかね。サイバーセキュリティと解剖室、両方ともアクセスしにくい。けれど私は両方に深く関わってきました。どちらもメディア関係者として自分にしか書けない分野かな、と思っています」
山田さんにとって、法医学関連の書籍は本書が第一弾だが、重要テーマとして今後とも取材を継続してゆく予定だという。
次の成果を、心して待ちたいと思った。