2024年12月5日(木)

オトナの教養 週末の一冊

2022年1月28日

解剖の商業化「神奈川問題」

 ただし、解剖数が多ければそれでいい、というわけではない。解剖の「質」が重要なのだ。

 公衆衛生目的の行政解剖は、監察医制度のある東京23区など3地域と沖縄県以外は、自治体の予算不足で通常やっていない。だが、神奈川県では19年に2879件と全国一の解剖数を、それも横浜市のたった一人の監察医が請け負っている。

「この例はひどいですね。現場を見た葬儀社社員によれば、臓器と脳を取り出し計測した後、脳と臓器をまとめて腹の中に入れ縫ってしまう。通常なら一体3~4時間かかるのに、この監察医は一体約20分。縫う作業を葬儀スタッフにやらせることもある。しかも、行政解剖費は自治体持ちのはずなのに、遺族が一体8万8000円を支払っている?」

「ええ。ですから、“解剖の商業化”ということで、法医学者の間で問題になっており、“神奈川問題”と呼ばれています」

 著者の山田さんはこの監察医への直撃インタビューを行っているので、「神奈川問題」の詳細は、ぜひ本書で確認してほしい。


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