2024年4月20日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2013年2月8日

 1996年から約1年間イギリスに住んだことがきっかけで、帰国後も年に1~2回はイギリスに渡り、さまざまな取材をしていました。その中で、自転車の利用者が年々増えていくことに注目したのです。首都・ロンドンは非常に大きな街ですが、自転車が走る道をつくるのに成功しつつある。東京もまた大きな街ですが、先ほどお話したように自転車が走りにくい。「イギリスと日本のこの差異は何か」「イギリスでできるのならば東京でもできるのではないか」「自転車先進国の中でも特にイギリスの事例が日本でも参考になるのではないか」。そういったことが本書の出発点ですね。

――いまのお話で都内は大変走りにくいということでしたが、具体的に日本の自転車事情の問題点とは何でしょうか?

秋山氏:走っても問題ないと世間では受け入れられている。自動車と歩行者のどちら側かと言えば歩行者よりの扱いというのが日本での自転車に対する認識ですね。

 また、本書でも指摘した左折問題があります。道路交通法に従い自転車が車道の左側を走っても、交差点などで左折しようする自動車と衝突するケースがあります。

――続いてイギリスの自転車政策についてお聞きしたいのですが、ロンドンは自動車の渋滞がひどいと聞きます。

取材場所にも自転車で来た秋山さん
(撮影:編集部)

秋山氏:他の都市との比較は難しいのですが、実際にロンドンへ行くと、ラッシュ時の渋滞は東京よりひどい感じがします。これまでも識者の方々は、自動車による二酸化炭素の排出を削減するために、自動車を自転車に代替すればよいという発想のもと、自動車利用者をいかに自転車へシフトさせるかが重要なポイントだと考えてきました。

 確かにこの意見は正しいのですが、イギリスの場合は他にも問題があるのです。それは、公共交通機関が非常に古く信頼が置けないということです。イギリスの公共交通機関は細かく張りめぐらされていますし、地下鉄やバスでどこへでも行けます。しかし、すべてが古いので故障など運休が多く、そのことにロンドン市民は辟易している。

 面白いことにロンドンの自転車政策を司っているのは地下鉄やバスなどの公共交通機関も管轄しているロンドン交通局なんです。ですからロンドン交通局から発せられたメッセージは、簡単にいえば「ロンドンの地下鉄は世界で一番古く修理や保全に莫大なお金がかかるので、市民に地下鉄ではなく自転車を利用してください」ということだと私は理解しています。


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