ここ最近、自転車で通勤する人や、休みの日にサイクリングウェアに身を包み颯爽と街を自転車で走る姿をよく見かけるようになった。その背景にはエコブームや健康志向も関係があるのだろう。遠距離移動の手段としてでなくても、近所の買い物や最寄りの駅まで自転車を利用する方も多いのではないか。自転車は多くの人が小さい頃から慣れ親しむ身近な存在だ。
しかし、近年自転車事故により、裁判で高額賠償に発展するケースもある。環境問題や東日本大震災を機に、これからますます自転車の利用が増加すると予想される中で、私たちはどのように自転車と付き合っていけばいいのだろうか。今回、昨年12月に『自転車が街を変える』(集英社)を上梓したフリーライターの秋山岳志さんに、日本とイギリスの自転車事情について話を聞いた。
――普段から自転車通勤をされているということですが、その中で日本の自転車事情に疑問を持ったことが本書の出発点なのでしょうか?
秋山岳志氏(以下秋山氏):近頃、日本ではエコや健康志向、そして東日本大震災を機に自転車を通勤などに利用する人が増えています。しかし、実際に東京都内を自転車で走ると大変走りにくいことに気付くのではないでしょうか。
たとえば、歩行者と自動車は走れるが、自転車は走れない道がある。これには、「自動車と歩行者だけを安全のために分離すれば良い」という高度成長期以来の基本的な発想があると思います。歩行者と自動車の間に位置する自転車は一体どこを走ればいいのか。こういった状況は危険ではないかとも思います。
一方、ヨーロッパや日本を含めた先進国では近年、環境問題が強く認識されるようになりました。エコを意識して、ヨーロッパでは車の利用を減らし、自転車へシフトしようという動きが全体的にあります。ヨーロッパの自転車大国と言えば、オランダやデンマーク、ドイツなどが日本のメディアでも取り上げられることが多いですが、オランダやデンマークは人口規模が小さく、ドイツも街単位の規模は意外と小さいため、これらの国の自転車政策を日本の、特に東京のような大きな街に持ってくるのはなかなか難しいのが実情です。