2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年2月19日

 問題の多い一帯一路にしても、「わが国人民と各国人民、特に第三世界の国々の人民との団結を強化し、国際社会において手を結ぶことのできる総ての勢力と連合し」の部分に無理にでも結びつけたなら、「毛主席の遺志」の実現を目指していると強弁できないこともない。

 敢えて批判は承知の上で習近平政権が推し進める内外路線を〝好意的〟に受け止めるなら、ここまでは「断固として毛主席の遺志を受け継」いでいると言えなくもない。だが、「わわれは永遠に覇権を唱えない。永遠に超大国にはならない」との「毛主席の遺志」と「戦狼外交」の4文字に象徴される強硬な外交姿勢の間には整合性は微塵も感じられないことを、敢えて強調しておきたい。

五輪後、そして焦点は「2027年」

 ここで冬期五輪後の習近平政権の動向を考えて見たい。

 五輪開始以前から、五輪後を想定してさまざまな議論が見られた。李克強首相を軸とする共青団勢力の反撃を予想する見方もあれば、中には1月19日に海外の中国語ネットに流された4万字に及ぶ論文「方舟と中国」のように、「習近平は統制経済をテコに自らの専制王国を目指し、民衆の価値観や理想を抹殺し、彼らの将来を奪ってしまった。共産党歴代指導者中、最も無能だ」などの見解も聞かれる。

 だが、一般的に考えれば過去に見られた林彪事件(1971年)、ニクソン訪中(72年)、四人組逮捕(76年)あるいは天安門事件(89年)のような超弩級の大変事でも起こらない限り、今秋の第20回共産党全国大会での習近平政権3期目継続は揺るがないだろう。

 そこで単に五輪後と言うのではなく、習近平政権の今後を中長期的に捉えたいと思うのだが、その場合、やはり焦点は2027年となるはずだ。それというのも27年は習近平政権3期目の最後の年に当たるだけではなく、前年の26年は毛沢東の死から半世紀であり、1年先の28年は鄧小平が対外開放に踏み切って半世紀後に当たるからである。

 つまり習近平政権3期目の最後の年となる27年は、「2つの半世紀」を挟んで、習近平政権は微妙な立ち位置に置かれるのだ。

 今秋から始まる3期目の5年間を現在の強硬路線で突き進み、12年以来の3期15年の成果を毛沢東に結びつけて評価するのか。はたまた鄧小平が踏み切った開放路線を前向きに捉えるのか。27年に政権を後継者に委ねるのか。それとも4期目に突き進むのか。

 いずれにせよ共産党式政治に則るならば、習近平は27年には毛沢東、鄧小平、それに自らの歴史的評価を逼られることになるに違いない。

 その時、共産党政権の歴史の中で毛沢東、鄧小平、習近平の3人の指導者をどのように位置づけるのか。大難題である。おそらくこれからの5年間、習近平政権は現在の内外強硬路線を突き進む一方で、大難題を前にして「イデオロギーの自家中毒」に悩まされるのではないか。

 であればこそ、いま構想すべきは「イデオロギーの自家中毒」を昂進させる手立てであり、そのための思想の戦いだと強く思う。費用対効果を考えるなら、それが最も効率的な「習近平包囲網」ではなかろうか。

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