プーチンはウクライナが核兵器を持つと確信
ロシア軍はなぜウクライナの原発を自らの管理下に置こうとしているのか? それは原子力の平和的利用と軍事利用を一体化して、ソ連時代から核開発を促進してきたロシアの考え方が反映されている。
ロシアは、敵対するウクライナが核武装することを本気で恐れている。プーチン大統領自身がそれを指摘している。
大統領は軍事作戦を実行に移す前の2月22日、ウクライナが核兵器を再び入手する意図を持っていると記者から問われ、「私たちは、(ウクライナの核兵器入手についての)この言葉がわれわれに向けられたものと理解している。そして、われわれは確かにその言葉を聞いたと言いたい」と答えた。
さらに、プーチン大統領はウクライナはソ連時代から幅広く、核開発の専門領域を保持したままだと指摘した。特に、原子力発電所がウクライナ国内にあり、原子力産業は「非常に良く、幅広い形」で発展しているとして、「ロシアへの戦略的脅威となりうる」と強調した。
ロシア側は、こうした警戒感の高まりについて、2月19日に行われたミュンヘン安全保障会議でウクライナのゼレンスキー大統領が演説した「ブダペスト覚書」に関する部分に起因すると説明している。
ブタペスト覚書は1994年に米国、英国、ロシアとウクライナで交わされた文書で、ソ連崩壊後にウクライナに残った核兵器を放棄する見返りに、米英露がウクライナの安全を保証するという内容。ゼレンスキー大統領はウクライナの安全保障が脅威にさらされていることに不満を示し、覚書は再検討できる、などと発言した。
ロシア側はこの発言を口実にして、ウクライナが核武装化する恐れがあるとして原発を次々に制圧下に置いている可能性がある。「自衛のため」とする侵攻の大義名分に用いているようにも思える。
取り沙汰される核開発の技術的な可能性
2月24日、隣国ベラルーシから侵攻したロシア軍の第一目標はチェルノブイリ原発だった。1986年に史上最悪の原発事故が起こって、現在、廃炉作業が進んでおり、ロシア軍は発電所内に貯蔵されている高レベルの放射性物質を確保し、ウクライナ側の管理下から取り除こうとしたとみられる。