2022年12月4日(日)

バイデンのアメリカ

2022年3月14日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 もちろん、世界第2位の経済軍事大国である今日の中国を、国内総生産(GDP)世界11位(1人当たりGDPは57位)、人口1億5000万人にしか過ぎないロシアの国力と同列には論じられない。

 しかし、もし、中国が、台湾武力侵攻に踏み切った場合、専制主義国家ロシアの暴挙で目覚めた自由主義世界が、さらに結束を強め、結果としてごうごうたる非難と制裁に直面した中国の国際的孤立化を招くことにもなりかねない。

 中国が今、台湾政策に関し、再考を迫られてきた背景には、こうした事情がある。

台湾政策再考を余儀なくされた3つの側面

 米有力シンクタンクの一つとして知られるワシントンの「戦略国際問題研究所」(CSIS)は今月2日、急遽、専門家を招き「ウクライナ危機とアジア―その影響と対応」と題したパネル・ディスカッションを開催した。焦点は、ウクライナ戦争が今後の中国の台湾政策にどう影響するかに集まった。

 パネリストの一人、中国問題に精通したボニー・リンCSIS「中国パワー・プロジェクト」担当部長は席上、中国は今後、武力侵攻を含めた台湾政策の再考を余儀なくされたとして、具体的に以下の点を指摘した:

 「ウクライナ危機が問題化した当初、ロシアとの関係を深めつつある中国に自信を与え、今後台湾に対する圧力を一層高めるとか、米欧同盟諸国がウクライナ対応に追われ、インド太平洋警戒が手薄になるといった見方が一時、広がった。しかし、目下のところ、パワー・ダイナミックスはそのように動いておらず、米欧がウクライナ危機対応にかかりきりになったからと言って、台湾問題に対する関心が薄らいでいるわけでは決してない。

 それどころか、ロシアのウクライナ侵略直後に、マイケル・グリーン元米国家安全保障会議(NSC)アジア部長ら米側代表団が訪台した例にもみられる通り、今や、ウクライナと台湾とのリンケージ論議が盛り上がってきており、人民解放軍の台湾作戦に対する警戒もこれまで以上に高まってきた」

 「この結果、中国側はこれまでの台湾政策を再考せざるを得なくなってきた。そこには3つの側面がある。まず第一点は、ロシア制裁のための西側結束ぶりだ。この点に関連し、当初、中国側のアナリストたちさえも、(もし、台湾侵攻の場合でも)世界の多くの国が中国経済に依存しているがゆえに、(対ロシア制裁とは異なり」米国主導の制裁に同調しないとみていた。

 ところが、実際は、対露エネルギー依存度の高いドイツを含め、予想もしない多くの国が、ある程度の犠牲をもいとわず結束を固め、対露制裁に乗り出した。このことは、関係各国が平時の場合と、危機に直面した場合とで、いかに態度が変わるかを暗示しており、それ自体が、中国側が台湾政策を立案する際の不確定要因となることを裏付けている」

 「第二点は、インテリジェンス情報の役割だ。今回、ロシア軍のウクライナ侵略に先立ち、米英仏などによる莫大な量のインテリジェンス情報が事前に公開され、ロシア軍部隊の動き、クレムリン内部の政策決定などが白日の下にさらされた。その結果、米国は欧州同盟諸国とともに早い段階でウクライナに対し、各種近代兵器、軍事物資を送り込むことができた。自由主義世界全体としても、インテリジェンス情報が共有され、ロシアに対する結束と厳しい対露制裁が可能になった。

 これに対し、中国では専門家も含め当初、ロシアのウクライナ侵略はあり得ないとの見方が多かった。中国当局としては今後、中国の動きに関する米側インテリジェンスが果たしてどの程度のものか、もし台湾侵攻の場合、事前に察知されず、世界にそれが知れ渡る前に、作戦遂行が可能かどうか、これから時間をかけ、慎重に検討せざるを得なくなった」

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