2022年11月27日(日)

バイデンのアメリカ

2022年3月14日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 「第三点として、侵攻のスピードについての問題がある。ロシアにとって陸続きの隣国であるウクライナに対する侵攻は、多くの点で障害も少なく、かつ素早く遂行できる環境にある(現実にはそうなっていないが)。この点、百数十キロメートルも離れ、しかも海峡を渡っての台湾侵攻とは全く異なる。

 ロシア軍は過去、多くの戦争を通じ、経験と実績がある。人民解放軍はこれまで、国外に大規模部隊を投入したことや、実戦経験を積んだことがない。目下のところ、ロシア軍は兵站面も含め、多くの困難に直面している。民間被害を最小限にとどめ、短期間で占領完了するという当初の目論見は外れた。

 今後、首都キエフ陥落にこぎつけたとしても、ウクライナ軍側のゲリラ戦は長期に及ぶことが予想される。まして、戦争経験のない人民解放軍がすみやかに台湾侵攻作戦を遂行できるかどうか、中国政府としても立ち止まって熟考を迫られることになる」

 「自由主義陣営の結束」については、パネル・ディスカッションに参加した別の参加者からも、欧州諸国のみならず、これまでロシアと比較的安定した関係を維持してきた日本、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などアジア諸国も一斉に、対露制裁に踏み切ったことが指摘され、中国による台湾侵攻に際しても「国際法違反」などを理由として、米欧諸国との協調姿勢をとるだろうとの発言があった。

中国は当面「様子見」続く見込み

 米保守系シンクタンクの「ヘリテージ財団」のニュースレターも去る8日、アジア問題専門家、ウォルター・ローマン氏の見解として「北京政府は本来、西側陣営が弱体化し、短期間で決定的な勝利が得られると確信した時にのみ、台湾侵攻に踏み切ることを旨としてきた」とまず指摘した。

 その上で、今回のロシアによるウクライナ侵略を受け①これまで存在意義そのものへの疑念を持たれていた北大西洋条約機構(NATO)が再び本来のNATOとして蘇りつつある、②欧州各国が軒並み防衛費増額に踏み切り始めた、③米議会では、通常戦力、核戦力強化を求める声が高まってきた、④ウクライナ国民がロシア軍相手に必死に戦う姿が世界に伝えられ、「自由、安全、繁栄」防衛の大切さが広く認識された――などの点にも言及した。

 結論としてローマン氏は「中国が学んだ今回の教訓は、台湾侵攻に関しては『当分様子見』ということになる。すなわち、ウクライナ戦争後、時間の経過とともに、西側世界は地政学的な〝休眠〟状態に戻るのか、あるいはその逆に『自由世界防衛』がポスト・モダン世界の現実となるのかのどちらかということであり、習近平としてはもちろん、前者に賭けたい心境だろう」と論じている。

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