イースター島やノルウェー領グリーンランドでは、宗教上の価値観やヨーロッパ人としての自己認識など、「賞賛に値する(そして長期間にわたって成功を収めた)」特性が、環境に応じてライフスタイルを大きく変化させることを妨げ、長い存続に役立ったかもしれないイヌイットの技術を採り入れることを妨げてしまった。
現代社会でも、本来賞揚されるべき価値観が意義を失ったのに、その価値観に固執する例は枚挙にいとまがない。たとえば、オーストラリアや米国モンタナ州、中国、ルワンダの環境や人口問題を、著者はあげる。
<おそらく、一社会としての成功と失敗を分ける肝心な点は、時代が変化したとき、どの基本的価値観を保持し、どの基本的価値観を捨てて新しい価値観と置き換えるべきかを知ることだろう。過去六十年間で、世界のほとんどの強国は、古くから尊重され、かつて国家のイメージの中心だった価値観を捨て去る一方で、その他の価値観を保持してきた。>
賢明な判断を下せる「勇敢な国民」や
「勇敢な指導者」でなくてはならない
イギリス、フランスしかり。日本、ロシア、アメリカ、そして現状を再考しつつあるオーストラリアしかり。「成功を収める社会や個人は、そういう困難な決断を下す勇気を持ち、賭けに勝利する運を備えているのかもしれない。今日、全世界が、環境問題に関して同様の決断を迫られている」。そう著者は訴える。
たしかに、「基本的価値観の一部が生存と両立しえなくなってきたと感じるとき、それを捨て去るかどうかを決断することは痛ましいほどの困難を伴う」ものである。
だからこそ、社会が破滅的な決断を下して坂を転げ落ちるにまかせる前に、「どの基本的価値観が死守に値するのか、どの価値観がもはや意味をなさないのかについて、賢明な判断」を下せる「勇敢な国民」や「勇敢な指導者」でなくてはならない。
一個人としても、さまざまな選択における「長期的な企て」と「根本的な価値観を問い直す意思」の重要性を再認識させられた。
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