2022年7月1日(金)

#財政危機と闘います

2022年3月18日

»著者プロフィール
著者
閉じる

島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

税金を使った高齢者の「買収合戦」を許すな

 そもそも、年金受給者の生活は、現役世代に比較して、コロナ禍においても安定していたはずであり、年金受給世代への臨時給付は不要と考えるのが普通だ。であるとすれば、こうした動きの背後には何らかの思惑が隠されているに違いない。

 つまり、今年は参院選が行われるため、年金を減らされた高齢者の反発を買えば、与党は票を減らすことになってしまう。有権者の高齢化と、若年有権者の低投票率とが相まって、高齢有権者の政治的プレゼンスが高まり、政治は高齢者の意向を忖度し、高齢者の利益を増進し、その利益を損ねることはしないとするシルバー民主主義論の主張通り、年金制度を歪めてでも、現役世代の負担により、高齢者に恩恵を施したいという魂胆が透けて見える。

 しかも、高齢者の票が欲しいのは与党だけではなく野党も同じなので、与野党問わず税金を使った高齢者の買収合戦が起きかねない。

 コロナの生活への悪影響を言うならば、一番の被害を被ったのは高齢者ではなく、高齢者の命を守るため、人生における貴重な時間に無理やり自粛生活を強制された子どもや若者たちであり、コロナ対策のため経済が失速したことによる現役世代の生活困窮者の方だ。これは21年の自殺者数は前年から減少したものの、子どもの自殺者数が依然として高水準が続き、女性の自殺者数が2年連続で増加したことからも明らかだ。

 読者の中には「たった5000円にめくじらを立てなくてもいいのではないか。大袈裟だ」との感想を持った方もいるかもしれない。

 しかし、ルール上本来削減されるべき年金額を年金制度とは別枠の仕組みをわざわざ作って補填するのを一度認めてしまえば、これが前例となって今後年金の減額が見込まれる事態になった時にも、同じことが繰り返されるリスクが非常に高く、現役世代の負担軽減策が骨抜きにされ、年金制度の根幹を揺るがす事態に陥ってしまうことに留意が必要だろう。

 それは回り回って若者の年金制度への信頼性・公平性を損ない、年金制度を危機に追いやってしまう。

 だから、若者も私たちも「たった5000円」などとは軽く考えずに、高齢者重視を続ける政治に対してNO!を突きつけなければならない。若者は政治による税金を使った高齢者の「買収合戦」「バラマキ合戦」に強く反対の声を上げ、絶対に許してはならない。現役世代、将来世代重視への政治への転換を実現しよう。

  
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る