「Wedge」2021年8月号に掲載され、好評を博した記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
わが国は低金利と赤字財政のマクロ政策を続けている。しかし、2%のインフレはなかなか実現せず、これを奇貨として赤字財政が肯定されている感もある。各種の無償化をはじめ政府のテリトリーは拡大しているが、税負担については、マスコミも政治も語ることは少ない。「空気を読まない」発言扱いが関の山だろう。
当面こうした状況が続くとしても、インフレ目標などの達成が究極の目的ということではあるまい。
私たちはどこに向かっているのか。この先に私たちが望んでいる社会は広がっているのか。そもそも私たち日本人はどのような社会を求めているのだろうか。
デンマークの社会学者エスピン・アンデルセンによれば、社会の形は、アメリカなどの「自由主義」、北欧などの「社会民主主義(以下「社民主義」)」、そして日本などの「保守主義」の3つのタイプに分類できる(下表)。
「自由主義」(低負担低福祉)は、「頑張れば上に行ける」という階層間の移動可能性を前提とし、機会の平等と自助をベースに自由競争に任せるシステムである。格差は各人の努力の結果とされ、ボランティアや寄付などが奨励される一方、政府の介入や税負担は小さい。
「社民主義」(高負担高福祉)は、社会保障が医療や年金などの保険分野に留まらず、失業、離婚、育児、学び直しなどへの自立支援や積極的労働政策にまで及ぶものだ。生活に安心感があるが、税負担は高く(スウェーデンの消費税率25%)、政府の信頼と透明性も不可欠だ。
「保守主義」(中負担中福祉)は、いわばその中間にある古典的モデルだ。家族や地域の助け合いが、自助と公助を補完する。ただし制度的な担保はなく、各人の自発性次第という不確実性が拭えない。