2023年12月7日(木)

#財政危機と闘います

2022年3月18日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

 政府・与党は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による賃金低下が年金の支給額に及ぼすマイナスの影響を軽減し、年金受給者を支援するため、新たな「臨時特別給付金」を設ける方針との報道があった。すでに別の支援策を受けている住民税が非課税の世帯を除く年金受給者らおよそ2600万人を対象に、1回限定で1人あたり5000円、総額1300億円を支給する。

(Donte Tatum/gettyimages)

 なぜ、年金額に賃金低下が影響を与えるのか、そして5000円なのか、少し解説が必要だ。

100年安心プランでの制度改正

 日本の公的年金は賦課方式で運営されている。賦課方式は、現役世代が拠出した保険料が、高齢世代への給付の財源として、そのまま横流しされる仕組みである。

 現在の日本のように少子化、高齢化が進行する場合、年金保険料を負担する現役世代が減り、年金を受け取る高齢世代が増えてしまい、現役世代の負担が重くなってしまう。

 そこで、2004年の年金制度改正(いわゆる「100年安心プラン」)では、現役世代の負担が過大なものとならないように、これまでの年金支給総額にあわせて現役世代の年金負担額を決める制度をやめ、年金負担額の範囲内で年金支給額を決める制度に移行した。

 それを実現する対策として、年金の受給額は、新たに年金を受け取り始める新規裁定者は現役世代の生活水準の変化に応じた賃金変化率、既に年金を受け取っている既裁定者は年金の実質的な価値を維持するため物価変化率で改定(スライド)されるルールを導入。さらに、長期的な給付と負担の均衡を図るため、高齢化の進行(平均余命の伸び)や現役世代の増減により年金額の伸びを調整する仕組み(マクロ経済スライド)という二段構えの制度変更を行った。


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