2024年11月24日(日)

研究と本とわたし

2013年2月27日

――ところで久保先生にとって、研究そのものの魅力や醍醐味というのはどのようなところにあるのでしょうか?

久保氏:研究は自分なりの仮説のようなものを立てますよね。例えば「この政治家はなぜ、このときこんなことを言ったのか」とか。それが当たったときには、何とも言えない喜びを感じます。

 また論文を書くときは、資料をいろいろ探していくわけですが、まさに自分が想像した通りの資料が見つかることがあります。すると自分の仮説の正しさを証明できることになる。しかもその仮説が、他の研究者によってまだあまり言及されていないことだったりすると、なおさら嬉しいですよね。

 それと論文などでは英語で発表するケースがときどきあります。するとそれに対して海外の研究者が評価してくれたり、人的な交流や視野も含めて、世界が広がっていく。研究にはそういう魅力もあると思います。

――最後に、これから取り組む研究テーマや方向性について教えていただけますか。

久保氏:やりたいことはまだまだたくさんあります。例えばその一つが、アメリカの今の政治の二極分化的な動向についての分析です。民主党と共和党、あるいは再分配的なリベラリズムと徹底的に小さな政府を目指す考え方とに分極化していますが、どうしてそのようになってきたのか――。現在は特に共和党の考え方に焦点を当てて研究を進めているところです。

 このほかアメリカの外交政策の変化が国内政治の変化とどのように結びついているかや、アジアの国際環境、とりわけ安全保障面でのアメリカと中国の関係、あるいは日本とアメリカの同盟関係などが、アメリカから見てどう変わっていくのかといったことも大きなテーマです。すでに一部着手していますが、これをさらに深めていきたいと思っています。

 本当は昔のように、純粋に楽しみのための読書ももっとしたいんですよ。でもどうしても仕事で読まなければいけない資料や本が次々と出てきて、そういう時間がなかなか取れないのが残念ですね。

――ありがとうございました。

久保文明(くぼ・ふみあき)
東京大学法学部教授。筑波大学助教授、コーネル大学、ジョンズホプキンス大学、ジョージタウン大学、慶應義塾大学教授等を経て現職。著書に『ニューディールとアメリカ民主政―農業政策をめぐる政治過程』『現代アメリカ政治と公共利益―環境保護をめぐる政治過程』(ともに東京大学出版会)、編著に『G.W.ブッシュ政権とアメリカの保守勢力―共和党の分析』『米国民主党―2008年政権奪回への課題』『アメリカ外交の諸潮流―リベラルから保守まで―』(いずれも日本国際問題研究所)、共著に『アメリカ政治』(有斐閣)、『オバマ大統領を支える高官たち』(日本評論社)、『超大国アメリカの素顔』『オバマ政権のアジア戦略』(ともにウェッジ)など。本年2月には編著『アメリカにとって同盟とはなにか』(中央公論新社)が刊行された。

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