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都市vs地方 

2022年3月29日

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佐藤泰裕 (さとう・やすひろ)

東京大学大学院経済学研究科教授

大分県別府市出身。1996年東京大学経済学部卒業。2002年東京大学大学院経済学研究科博士(経済学)。名古屋大学大学院環境学研究科准教授、大阪大学大学院経済学研究科准教授等を経て18年より現職。

 また、目的③に鑑みても、首都機能移転が災害対応力を強化できるかは不明である。首都機能を移転しても、とある首都機能は一か所にしか存在しないため、そこが災害に見舞われた時にその機能を失うリスクがある、という点は変わらない。移転候補地の方が東京より災害に見舞われる可能性が低いことがはっきりわかっていなければ、災害対応力が強まるか弱まるかは判然としない。

実りある首都機能移転の議論に向けて

 これらの点で、22年2月16日に高市早苗自民党政調会長のツイートは示唆に富んでいる。首都機能を移転するのではなく、「一時的に首都機能をバックアップできるような備えを検討」する、というのである。

 首都機能を移転するのではなく、首都機能を持つ場所をもう一つバックアップとして作るのであれば、首都機能に近くなる地域は生じても、遠ざかる地域は原則として生じないため、先述のような合意形成の困難は克服できる可能性が高い。また、災害に備えるという意味でも、首都機能を持つ場所をもう一つ作れば、災害がその二か所で同時に起きない限り、首都機能の喪失は免れる。

 もちろん、同じ機能を二カ所に持つということは、平時においては行政の非効率を生む可能性があるため、その費用と災害リスクから予想される損失とを天秤にかけて、注意深く吟味する必要がある。

 現状で首都機能移転を進めるためには、東京への一極集中に対する定量的分析、移転に対する合意形成、移転ではなくバックアップを備える場合でもその費用と災害リスクから予想される費用との比較検討など、判断の材料となる分析が丁寧に行われることを期待したい。

 
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