ウクライナの激しい抵抗が各国の態度を覆し始めた
インドの微修正のもう一つの原因は、ウクライナの善戦であると思われる。開戦時、インドは、ロシアがウクライナに対し圧倒的勝利を収める可能性があると認識していた可能性がある。
単に軍事力を比較すれば、ロシアの軍事力はウクライナを圧倒していた。特に空軍の差は大きかった。しかも、インドメディアをチェックしていると、日本や西側のメディアと違い、ロシアからの情報が多数蔓延していた。だから、インドでは、ロシアが勝つ、ウクライナはロシアがウクライナを破壊してしまう前に降伏すべきだといった論調が少なからず見られた。
ところが、最近、インドメディアの書きぶりは変わってきている。そして、ウクライナ空軍がいまだに生き残り、善戦していることについて、ウクライナ空軍へのインタビュー記事などを出すようになっている。これはインドの雰囲気の変化を反映したものだ。
避けたいソ連崩壊直撃の苦い経験
ロシアが勝つならば、ロシアに配慮するインドの政策は、インドに利益をもたらすだろう。しかし、ロシアが勝たないならば、どうだろうか。態度を大きく変えることはできなくても、インドはロシア寄りのイメージを変えておきたくなる。
冷戦時代、インドはソ連側の国であった。だから、ソ連崩壊が直撃する結果になった。経済は崩壊の危機に瀕し、ソ連から修理部品や弾薬の供給を受けられなくなったインドの軍人たちは、ゴミ捨て場のようになった旧ソ連軍の基地や軍需工場を歩き回って、修理部品を見つけるはめになったのである。
現在インドは、昔ほどロシアに依存しているわけではない。しかし、依然としてロシアが勝たないならば、その情勢はインドに影響する。インドは、ロシア寄りのイメージを緩和する必要に迫られ始めたのである。
今回のロシアのウクライナ侵略は、全世界的な影響を与える大きな戦争になっている。そのため、ウクライナの善戦はインドの態度も含め、世界に影響しつつある。
問題は、ロシアのウクライナ侵略で、対ロシア政策が重視される中、インド太平洋におけるQuadなど、対中国のための枠組みが壊れてしまう可能性が出ていることだ。その点で、外交政策が問われる状態になっており、日々動静から目が離せない情勢が続いている。
今年行われるQuad首脳会議の主催者は日本で、東京で開催される。まさに、日本の外交政策が問われることになる。