2022年11月29日(火)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年5月9日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 日本で長年行われているやり方は、ノルウェーなどの北欧漁業と比較すると、無駄があることがわかります。何が無駄なのか解説しましょう。

① カツオには科学的根拠に基づく総漁獲可能量(TAC)も、漁船ごとの個別の漁獲枠(IQ,ITQ,IVQなど)が設けられていません。このため、漁船は獲った者勝ち。各漁船が我先にと縦横無尽に燃料を浪費して魚を探し回ります。漁船のスピードも大事です。まさに「Race to fish(早獲り競争)」であり、水産資源をサステナブルにするために避けるべきやり方です。

② 下の図は、ノルウェーが利用している漁場図です。碁盤の目のように番号付けされています。そして漁船は、漁獲すると、どの番号の漁場で、何トンでどのような大きさの魚なのかネット上で公開します。情報は正確であり、駆け引きなどありません。各漁船はどこに行けば魚の種類、価格に影響する魚の大きさを知った上で、漁場に直行します。スピードを上げて他の漁船より早く漁場について一儲けなどという発想はありません。

漁場図「Norges Sildesalgslag」 写真を拡大

 なぜなら、実際に海での漁獲可能な量より、かなり少ない漁獲枠が漁船ごと(一部小型船を除く)に設定されているので、焦る必要などないのです。それどころか、決められた漁獲枠は漁獲できるので、如何に他の漁船と、水揚げのタイミングが重ならないようにして魚価を上げるかを重視しています。

③ 上記の①②の仕組みは水産資源源をサステナブルにするのに役立っています。日本の仕組みでは、縦横無尽に走って燃料を消費するだけでなく、漁業者も魚の資源もヘトヘトです。

④ 下のグラフをご覧ください。日本の漁船は古く10年未満の新しい漁船は2割程度しかなく、30年以上の船齢の漁船が数多くあります。水産資源管理に成功しているノルウェーなどの国々では、漁業は儲かっていて成長産業なので次々に新造船を導入しています。新造船になることで燃費も良くなる好循環となります。

(出所)水産白書 写真を拡大

どうすればよいのか?

 資源管理ができていない海で情報共有を進めれば、一時的な漁獲量の回復はあっても、資源をさらに悪化させてしまいます。

 やるべきことは、科学的根拠に基づくTACを決めて、それを漁業者や漁船ごとに割り振る個別割当制度(IQ,ITQ,IVQなど)を実施することです。北欧、北米、オセアニアといった水産資源管理に成功し漁業で成長を続ける国々で、すでに実施されている例を取り入れることです。

 個別割当制度がしっかりしていれば、今のように無駄に燃料を消費しながら血眼になって魚を探す必要はなくなります。

 そして水産資源が回復し、SDGs14.4で提唱されている水産資源を最大持続生産量(MSY)レベルで維持できるようになれば、再び日本でも漁業が成長産業への舵を切ることも可能になります。魚が将来にわたって獲り続けられることが分かれば、新しい漁船も導入され、労働基準や収入も向上します。もちろん、本題である燃料の消費量も減らすこともできるようになるのです。

 
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 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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