2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年5月31日

 英国のシンクタンク国際戦略研究所(IISS)のナイジェル・グルド=デイビス(元駐ベラルーシ英国大使)が、ウクライナ戦争における西側の目標はロシアの置かれた状況を侵攻以前よりも悪くすることであるべきだと論じる一文を、5月12日付の米ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿している。

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 ロシアのウクライナ侵攻を前にした時点では、ウクライナはロシアの圧倒的な戦力により短期間に制圧されるだろう(ウクライナはゲリラ戦術で抵抗を続ける)との観測が有力であったように思うが、西側の武器とインテリジェンスに支援されたウクライナ軍の奮戦によって戦況は異なるものとなっている。

 この戦況を見て、西側の発言は、グルド=デイビスの論説にもあるように、強気なものに転じている。最近、米国のオースティン国防長官は、ロシアが弱体化することを望むと述べ、英国のトラス外相は、ロシアをウクライナ全土から撤退させると言い、欧州連合(EU)のフォン・デア・ライエン委員長は、ウクライナが勝利することを望んだ。

 しかし、この戦争がどういう形で終わるべきなのか、西側の目標が明確にされていないとグルド=デイビスは指摘して、ロシアの置かれた状況が2月24日の時点よりも悪化すること――その枢要な要素は占拠していたウクライナ領土の縮小であろう――を西側の目標とすべきであり、最低限、西側の政策はロシアが新たなウクライナの領土を獲得しないことを確保し、ロシアがウクライナに対する政策を基本的に変更するまでは厳しい制裁を維持すべきことを論じている。

 西側の一致した政策は、ロシアに代償を支払わせることであるので、この論旨に異論はないであろう。


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