2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2022年6月6日

 加えて設備の不安もある。例えば、漏水により工業用水の取水が減った愛知県の碧南火力発電所の操業が影響を受ければ、供給力が減少する。来年1月と2月は、さらに厳しい状況だ。東電管内はマイナス、つまり供給設備が不足する。中部から九州電力管内も1.3%と厳しい状況が予想されている。

 発電設備が減少していることから、これから毎年電力供給は綱渡りが続くことになるだろう。東日本大震災後に停止した原発の再稼働が進まない中で、電力市場の自由化を進め、さらに再生可能エネルギーの導入まで進めた結果が招いた事態だが、制度の手直しが続く中で、当分の間この状況が解消する見込みはない。

 短期的な対策として、緊急時に対応可能な発電設備の募集などが行われるが、どの程度供給設備が増えるかは分からない。そこで、経済産業省は需要量を抑制する方法として需給逼迫警報に注意報を追加導入する予定だ。

 供給予備率が3%から5%になる見通しとなれば、前日の午後4時に発令される。今年3月21日夜には翌22日の東電管内の予備率が3%以下になる見通しとなり電力逼迫警報が発令されたが、これからは、警報も前日の午後4時にも発令されることになった。そこまでして需要を抑制しなければいけない状態なのが、さらに強硬な手段も検討されている。

 経済産業省は、電力需給が逼迫した場合には、電力使用制限令を発令する検討も開始した。特定のエリアの500kW以上の契約の大口需要家を対象に、地域・期間・時間帯を指定した上で使用最大電力(kW)または電気使用量(kWh)を制限する命令だ。予備率が1%を下回る見通しとなった際には、供給力不足による大規模停電を避けるため一部で計画停電を実施することも検討されている。

 綱渡りの電力供給に加え、電気料金も上昇を続け、電力供給を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。

上昇を続ける電気料金

 自由化した市場において、小売事業者から電力供給を受けることができない大口需要家が、最終保障供給を利用する件数も増えているが(「日本の危機 いよいよ電気を買えない時代が始まる 」)、最終保障供給の件数は、5月になりさらに増加している(図-1)。

 最終保障供給の料金が市場価格を反映せず、小売事業者が提示する小売価格よりも安くなることもあるため、最終保障供給を求める大口需要家が増えている。このため最終保障供給の料金が市場価格を反映するように制度変更が行われる方向なので、これから最終保障供給の料金も上がることになるだろう。


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