シェールガス革命
領土交渉にも影響
森元首相とプーチン大統領といえば、12年前の「イルクーツク声明」に署名した当事者だ。平和条約締結後の歯舞・色丹の二島返還を明記した1956年の「日ソ共同宣言」の有効性を初めて文書で確認し、残る択捉と国後の2島の帰属問題は並行協議することとされ、領土交渉の進展が期待された。
だが、その後、プーチン大統領は大きく後退。05年にはテレビで「四島に対するロシアの主権は第二次世界大戦の結果であり、国際法によって確定された。この部分について交渉する意思は一切ない」と述べた。
ロシア政府は北方四島での経済開発を進め、10年11月にはメドベージェフ大統領(当時)が国後島を訪問。日本の反発を招き両国関係が冷え込んだ時期もあった。
それでもロシアが北方領土問題に取り組む構えをみせるのは、エネルギー問題と中国の存在があるからだ。
ロシアでは昨年12月、アジア向けに原油を輸出する「東シベリア・太平洋石油パイプライン」が全線開通。さらにウラジオストク近郊で液化天然ガスのプラント計画もあり、いずれも主要な輸出先として日本を想定している。
米国のシェールガス革命を受けて欧州市場でロシア産天然ガスが苦境に立たされているだけに、ロシアは日本に気を配らざるを得ない。しかも、中国にパイプライン経由で石油を輸出しているが、輸出先が中国に偏れば、価格決定権を握られてしまいかねない。ロシアは中国の膨張に潜在的な脅威を感じ、日本との関係強化を急いでいるとの見方も多い。
だからといってロシア側だけが一方的に譲歩するのでは解決には至らないだろう。森元首相は1月にBS番組で、国後、色丹、歯舞の3島返還案に言及したが、日本が譲歩するともなれば、世論の支持は得られるか。
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