――ダイヤモンドなどの鉱山開発はどうでしょうか?
平野氏:鉱山開発についても海外から盛んに投資が入っており、アフリカ全体の鉱産物輸出額は農作物より多いのですが、それでもまだ総輸出の1割程度です。輸出の中では石油が7割。なにせ石油は世界最大の貿易品ですから、金やダイヤとはそもそも取引高が違います。鉱山開発については建設中のものも多く、これから生産が増えていきます。主体は鉄鉱石や銅などのベースメタルですが、日本にとってはレアメタルが重要です。
――最近、中国人がアフリカに多いという話を耳にしますが、資源開発の投資額でも中国の存在感が大きいのでしょうか?
平野氏:投資額で言えばやっぱり欧米系の資源企業や石油企業が多いですね。中国の資源企業は単独で進出するのみならず、これら欧米企業と組んで進出するケースも多いのです。
――それはBPやエクソンモービルなどのいわゆる石油メジャーと呼ばれる企業でしょうか?
平野氏:主要生産者は石油メジャーですが、メジャーのほか独立系ジュニアと呼ばれる中堅資源企業や、アフリカ現地の企業も多いですね。
じつは、原油についても鉱産物についても、アフリカに資源が埋蔵されていることは昔からわかっていました。しかし政情不安などがありコストもかかることに加え、80~90年代は資源価格も安かったので事業としてペイしなかった。また中国経済が現在のように巨大化するまでは資源需要がさして増えず、安定していたこともあり、石油メジャーの間ではアフリカの埋蔵資源には手を出さないという暗黙の了解があったように思います。
――本書を読むと、アフリカにおける中国はしたたかだなという印象を受けました。
平野氏:中国人に話を聞くと、外国人が思っているような包括的戦略が中国にあるわけではないと言います。たとえば、中国には石油に関する国有企業が3社あります。その3社が調整をせずに勝手に動いていると言う。しかし政府に関しては、先進国のようにいちいち議会を気にしたり、日本のように政治家が年間3分の1国会に拘束されていたりといったことがないので機敏に動け、出足が鋭いのは確かです。
援助に関しても中国はどうも独立採算制らしく、日本のJICAのような援助機関が存在せず、案件ごとにさまざまな機関が請け負うかたちになっている。機動的といえば機動的でしょうが、調整が取れていないといえば取れていないわけです。