実践指向が強くて行動優先、悪く言えばデタトコ勝負でいながら全体として効果的に進んでいるのは、急速に成長している経済の特徴でしょうね。高度経済成長期の日本も当時は「日本株式会社」と呼ばれ、一丸となって邁進しているように外からは見えていました。しかし、実態はけっしてそうではなかった。日本のなかではいろいろモメていた。いまの中国もそんな感じなのでしょう。
――30年間アフリカへ行き来し、やはり最近中国人は目に見えて増えましたか?
平野氏:目に見えて増えています。しかしこれは、資源獲得をめざした中国政府の、アフリカ諸国との政策的な関係強化とは別なのです。
中国のアフリカの政策には3つの柱があります。1つは資源獲得。2つ目はアフリカからの台湾の追い出し。3つ目が走出去(Out Going)戦略です。2つ目の台湾の追い出しというのは、アフリカには台湾と国交をもつ国が多く残っていたので、台湾と断交させることを目的としたものです。
3つ目の走出去戦略は中国企業の対外進出奨励政策です。中国経済は投資効率が非常に悪い。過剰投資で過剰生産なんです。過剰生産でモノが溢れ、物価が安いため、生産性の悪い中国企業は利益があがっていません。そうした企業に対し国外に進出しなさいと促している。また、都市と農村部の格差の問題もあります。農村部の人たちに、上海などの国内の都市に出稼ぎに来るのではなく、海外へ働きに出なさいと政府が促している面もあります。
――推定でどれくらいの中国人がアフリカにいるのでしょうか?
平野氏:1999年末にはアフリカ大陸全体に推定で9万人と言われていた中国人の数は、現在では100万人に達したといわれています。国として一番多くいるのは南アフリカで、20万とも40万ともいわれます。そのなかにはトレーダーや雑貨商、中華料理屋から鍼灸師まで様々な職種の人たちがいます。一番多いのはおそらく建築関係でしょう。私自身が確認したわけではないのですが、農民もいると聞きます。
アフリカのどの国の首都に行っても漢字で書かれた看板を見るようになりました。驚くのは、地方のかなり小さい街でも中国人がいることです。どこにでも生活の場を張れる中国人の逞しさですね。
――そうした中国人の急増に対して現地の人たちはどう感じているのでしょうか?
平野氏:アフリカ人の社会ははるか昔から多言語社会で、基本的に異文化別言語の人間を拒みません。アフリカ全体で3000の言語があると言われ、なかには数百家族しかいない小部族も存在する。彼らは互いに交流しながら生活してきた。ですから、他者に対して非常にオープンな社会です。これはアフリカ人のすばらしい特徴です。その包容力が100万もの中国人を受け入れているのでしょう。かつてアフリカを植民地支配したイギリス人もフランス人も、最盛期ですら数十万しかいなかった。