米ハドソン研究所客員研究員のジョン・リー(John Lee)が、Diplomat誌のウェブサイトに10月4日付で掲載された論説で、資源国の石油など資源を囲い込もうとする中国のエネルギー政策は、中国のエネルギー安全保障を高めない一方で、中国が「無責任な当事者」であるとのイメージを強めるものである、と述べています。
すなわち、去る7月、中国国家オフショア石油公社(CNOOC)はカナダの石油開発会社Nexenを151億ドルで買収しようとした。Nexenの時価が65億ドルと評価されていたことを考えると、CNOOCの動きは戦略的考慮からとられたものだと疑われた。
中国が「エネルギー安全保障」を国の優先事項としたのは2003年以降であった。その後中国の国営石油会社は、世界の30カ国以上で活動し、少なくとも20カ国で、買収した油田で石油を生産している。
これに関しては二つの点が懸念される。第一は、中国が世界の石油の供給を左右し、石油価格をゆがめる恐れだ。第二、は国営石油会社の活動を指導しているのが中国共産党であることから、これらの活動の背後に戦略的考慮があるのではないかとの疑念である。
しかし第一点については、2010年で中国の海外石油生産量は一日137万バレルで、これは世界の石油輸出量一日6400万バレルの2%強に過ぎず、2020年においても、もっとも楽観的な見方で、中国の海外石油生産量は一日200万バレルだが、世界の石油供給量は一日7000万バレルと推定されている。
石油埋蔵量については、中東の主要産油国は中国に利権を譲りそうになく、全体として中国の影響力は限られている。それどころか、中国は海外の石油生産に力を入れても、中国の需要を満たすにははるかに足らず、依然輸入に大きく頼らざるを得ないので、石油価格の変動にさらされ、エネルギーの安全を保障するには程遠い。
第二点については、中国がもっともアプローチしやすいのはイラン、スーダン、ベネズエラといった世界から「のけもの」にされている国で、中国はこれらの国の石油資源へのアクセスを得る代わりに、資金援助や国連安保理などでの外交的カバーを与え、その結果、これらの国が西側諸国の経済制裁や孤立化政策に耐えやすくなっている。
しかし中国がこれらの国を支援する結果、国際社会で「無責任な当事者」とのイメージを定着させる結果になっている。
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中国には、強引に世界の資源の囲い込みを図っているとの印象が強くつきまとっています。しかも、対象国の多くは、世界から「のけもの」にされている、いささか行儀の悪い国で、中国は、資源にアクセスするため、あるいは金銭的に、あるいは外交的にこれらの国に恩恵を与えており、結果としてこれらの問題国の政権にてこ入れしていることになります。