2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2013年4月5日

 もちろん中国の進出に対する批判はアフリカ内外にあります。アフリカ人から仕事や雇用を奪っているという批判や、中国がアフリカから資源を輸入し工業製品を輸出する関係は植民地支配と変わらないという批判もあります。しかし、民間レベルできちんと定着しているところがあるのも確かです。

――現在のアフリカを見る上で重要な視点とはなんでしょうか?

平野氏:資源と中国、そしてグローバルな視点です。アフリカの経済成長が資源開発をめざす海外からの投資で始まったように、アフリカはアフリカ人の意思や政策で動いているわけではありません。ですから、アフリカの国内の動きを見ても、来年の成長率がどうなるのかは分からない。常にアフリカの外の要因を見ていなくてはならなくなりました。

――そうするといかにグローバルな視点で、海外企業の動きを見るかが重要ということでしょうか?

平野氏:そうです。法制度の整備、優秀な労働者の育成、インフラ整備といった国内要因も大切ですが、投資は資源があるところに優先的に入っている。そういう意味では、資源業界がどこを見ているかは重要なポイントです。また、資源業界に限らずさまざまなグローバル企業の戦略、アフリカ現地企業の動きがカギを握っています。

――本書はどんな人たちに読んで欲しいでしょうか?

平野氏:これまで開発関係の議論は経済学の人が中心でしたが、国際政治に関わる人たちにも手に取って欲しいですね。別に専門家でなくとも、国際関係に興味のある人なら、おもしろく読んでもらえるのではと思います。

 この本は開発途上国全般との関係性を念頭において書きました。これまでのアフリカに関する本はODA政策に関する議論が多かった。しかしこれからは、資源安全保障を中心とした途上国外交のなかでアフリカをどう捉えていくかという視点が重要で、それがはっきりしていなければ、なんのために誰を援助すればよいのかがわからない。とくに、東日本大震災および福島原発事故のあとは、こういった視点がきわめて重要になりました。援助政策においては相互利益の実現が大切であって、日本のためになっていなければならないというのが私の考えです。

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