著者はこうも記す。
共同体組織にドップリ浸かっていると「場」の空気にしたがい、周囲に同調しなければならない。ところが副業という形で別の世界を持ち、一つの組織に依存しなくなると、仕事をするうえでも会社に対しても強気な態度がとれるようになる。いざというときの「逃げ場所」ができるからである。
進展したテレワークをどう振り返るのか
本書を通読すると、テレワークによって日本の濃密な社会における承認欲求の厄介さが浮き彫りになったと同時に、テレワークがもたらす新たな可能性への期待についても見て取れる。著者は日本社会の「濃い関係」がもたらすものについて「暗黙知を共有し、信頼関係を築く」といった利点もあるなど、全否定しているわけではない点も印象的だ。そのうえで著者はこう締めくくる。
テレワークによって働く場所、活動のフィールドが会社の外に開かれるこれからは、フラットで開かれたコミュニティが公私両面で重要な役割を果たすようになる。そのなかで各々が自分の誇れるものを堂々と披露し、承認欲求を満たせばよい。
コロナ禍ではからずも進展したテレワークには評価が分かれる部分もあるが、「働き方に新たな可能性をもたらして、意外と悪くなかったかも」と振り返る日がやってくるのは、実はさほど遠くないのかもしれない。