2022年6月25日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2022年6月11日

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池田 瞬 (いけだ・しゅん)

経済ジャーナリスト・書評家

ビジネス・経済分野をカバーする現役ジャーナリスト。取材活動のかたわらライフワークとして書評執筆に長年取り組んでいる。国際問題、メディア、音楽など幅広いジャンルに関心がある。

 フィンランドの国の魅力を描く本である。国の名前から連想するイメージは、ムーミンやフィヨルド(入り江)などが多いが、最近では、若い女性首相が率いている国で、北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請したというニュースを記憶している人も多いだろう。本書『フィンランドはなぜ「世界一幸せな国」になったのか』はこの北欧の国の男性と結婚し、30年以上現地に住む女性が著した。

(diegograndi/gettyimages)

学術的視点によるフィンランドの特徴 

 大学人でもある著者は学究的な鋭い視点でフィンランドの多様な特徴を紹介している。人口約553万人で、そのうち7.3%は外国生まれ。歴史的にロシアという隣の大国を常に意識せざるをえない国である。

 北欧の国々の家具や照明器具を知る人はその魅力に引き込まれるが、中でもフィンランドは独特の特徴がある。

 まず印象的なのは人々に「優しい国」という点である。若いカップルでも比較的容易に家を購入でき、そのための多くのサポートがあり、売買の手続きもいたってシンプル。日本ではサマーハウスやヨットを持ったり使ったりすることは経済的に余裕のある富裕層に限られるが、フィンランドではごく普通の人でも楽しむことができる、といった具合である。

 労働者階級にもサマーハウスを持てるようにしたのが、英語でアロットメントと呼ばれるシステムだ。フィンランドに導入されたのは1910年代。(中略)1990年代になると、それが再発見されて人気になった。土地は自治体が所有し、年ごとの契約で借りる場合と購入する場合がある。
 休暇は、経済的な余裕のある人だけのものではない。常に弱者に対する配慮があり、シングルマザーの家庭や失業で収入の少ない家庭、障がい児のいる家庭などに、自治体や市民組織が宿泊施設での休暇を無償または低価で提供している。

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