2022年10月7日(金)

スポーツ名著から読む現代史

2022年7月22日

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中島章隆 (なかじま・ふみたか)

元毎日新聞運動部長・論説委員

なかじま・ふみたか 1952年長野県生まれ。元毎日新聞運動部長・論説委員。現在は立教大講師、東京プロ野球記者OBクラブ理事。月刊政策情報誌「毎日フォーラム」で2009年から「スポーツを読む」を連載している。

 長距離種目は「女子の時代」と見抜いた小出の慧眼が光る。小出自身自賛する洞察力と観察力の勝利だ。著書から引用してみよう。

 <日本でいちばん早くから女子の長距離練習をスタートさせていたのはオレだ、という自負が私にはあった。私のノウハウを世界にぶつけてみたい、それで金メダル獲りにかけてみたいという夢は、考えるだけで身ぶるいしそうだった。1965年ごろから女子選手に施した長距離トレーニング法は、私自身の骨となり肉になったと思う。>(『人育て術』228頁)

 <昭和40年に私は教員になった。その時点で、私は「これからはスポーツも女子の時代になる」と本気で思っていた。何であれ競争は「早い者勝ち」が原則である。誰もまだ手をつけないうちに、いち早く知識を蓄え、しっかりと準備をしておけば、必ず勝てるのだ>

 <私は女子の生理がコンディションに、あるいは体の機能にどういう影響を与えるかを観察し始めたのである。その結果、生理の2、3日前あたりから体がむくみ始めるとか、体重が増えてくるといようなことが分かってきた。生理が始まって1日目は走れるが、2日目になると走れない。3日目になったら、試合に出ても大丈夫だ。8日目頃に試合に出すと、急性貧血になったり、ホルモンのバランスが悪くなっているから、いい成績は上げられない。女子選手と一緒に練習しながら、そういう観察と分析をずっとつづけていたのだ。(略)私にはもちろん自信があった。長年にわたって地道に蓄積してきた知識やノウハウがあるのだ。絶対に負けるはずがない。>(『君ならできる』(123~124頁)

25年は東京で世界陸上、巻き返しなるか

 アフリカ勢に席捲されたオレゴン世界陸上の女子マラソン。小出が力を発揮したのは、アフリカの女子選手がまだ本格的世界の舞台に進出する前のことはあった。それを割り引いても、小出の残した業績と言葉の数々は、その重みを失ってはいない。

 2025年に東京で世界陸上が開催されることが決まった。「25TOKYO」での巻き返しに、どんな新鋭が出てくるか。指導者たちもここが踏ん張りどころだ。(敬称略)

  
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