これに対し、香港返還25周年式典において、習近平は演説し、今後、長期にわたって資本主義制度や自治権を香港は維持できる、との趣旨の発言を行ったが、これは、香港で50年間、二制度を維持できると述べた鄧小平発言の実態とはその内容を大きく異にしている。
対中姿勢を変化させてきた台湾の「今」
自由、民主主義、法の支配が定着した台湾では、中国と台湾の関係を如何に位置付けるかをめぐって、いくつかの変化を経験してきた。「特殊な国と国の関係」(李登輝総統の時期)、「一遍一国」(陳水扁総統の時期)「一つの中国、各自表述」(馬英九総統の時期)などを経て、今日の蔡英文総統時代の対中姿勢・対中政策がある。
蔡英文の対中姿勢は、台湾はすでに主権が確立した独立国(中華民国、在台湾)であるが、敢えてそのことを強調して中国を挑発することなく、現状維持の枠組みの中で、対話を通じ問題を解決しようとしている。
今日、2300万人の台湾人自身、中国が、一時考えたような「一国二制度」の台湾を希望する人――いわんや、中国の統治下にある「一国一制度」であることを受け入れる人――は、まずいないであろうと思われる。