2024年4月27日(土)

2024年米大統領選挙への道

2022年7月27日

「最高裁」対「女性と若者」

 バイデン大統領の人工妊娠中絶を巡る選挙戦略はこうだ。まず、「最高裁」対「女性と若者」の対立構図を作り、最高裁を「悪者」に仕立て、選挙の鍵を握る郊外に住む中絶擁護派の女性と若者を動員する戦略に出ることが予想される。

 次にスーザン・コリンズ上院議員(共和党・東部メイン州)と、トランプ前大統領に指名されたブレット・カバノー最高裁判事の衝突を利用するかもしれない。承認公聴会の前にカバノー判事がコリンズ上院議員に会い、人工妊娠中絶に関して「すでに決着した法律だ」と語ったという。

 当時、保守派のカバノー氏は最高裁判事になるために、中道派のコリンズ上院議員の票を欲していたからだ。コリンズ議員はカバノー判事に「欺かれた」と不満を述べている。

「トーマス最高裁判事」対「女性と若者」

 バイデン氏はカバノー最高裁判事に加え、トーマス最高裁判事も標的にするだろう。「トーマス最高裁判事」対「女性と若者」および「トーマス最高裁判事」対「性的少数派(LGBTQ)」という対立構図を鮮明にすることは間違いない。というのは、保守派のクラレンス・トーマス最高裁判事は、避妊並びに同性婚を違憲にする判決を下す可能性があるからだ。

 バイデン氏はトーマス判事への攻撃が、避妊と同性婚を支持する女性と若者の熱意を高めると計算している。米カリフォルニア大学ロサンジェルス校法学部ウイリアムズ研究所によれば、米国では18歳から24歳までの若者の30%、25歳から34歳の26%がLGBTQである。「トーマス最高裁判事」対「性的少数派」という対立構図を通じて、これらのLGBTQの若者票を取り込む戦略は有効である。

 加えて、トーマス判事の妻で共和党の活動家ジーナ氏が、20年米大統領選挙結果を覆し、トランプ勝利を企てたという疑惑が浮上している。米ワシントン・ポスト紙は21年1月6日に発生した米連邦議会議事堂襲撃事件を調査している下院特別調査委員会(ベニー・トンプソン委員長)が、ジーナ氏を調査対象としていると報じた。トランプ前政権のマーク・メドウズ前大統領補佐官とジーナ氏のメールの内容に注目しているという。

 バイデン氏と民主党は、カバノー判事、トーマス判事およびジーナ氏を標的にして、女性票と若者票を稼ぐ戦略を選ぶ可能性が高い。


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