2つの公聴会と「印象操作」
トランプ前大統領はこれらの真実を消そうと必死だ。「アメリカ・ファースト・アジェンダ・サミット」での演説において、アダム・シフ下院議員(民主党・西部カリフォルニア州第28選挙区選出)を名指して批判した。なぜシフ下院議員なのか。
シフ議員は、ロシア疑惑を巡るトランプ弾劾公聴会で委員長を務め、今回の議事堂襲撃事件に関する公聴会ではメンバーとしてトランプ氏の言動を厳しく非難しているからだ。トランプ氏は弾劾されたが起訴されなかった。
トランプ氏はシフ議員を利用して、2つの民主党主導による公聴会を結びつけて、共に「でっち上げ」という印象を与えた。2つの公聴会を同レベルで語り、得意とする「印象操作」を行ったのである。
米国民の本音
上で紹介した米公共放送、公共テレビとマリスト大学の共同世論調査(22年7月11~17日実施)では、「1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件に関する公聴会で見たり聞いたりした内容に基づくと、トランプ前大統領が罪で告発されると思いますか」という質問に対して28%が「はい」、61%が「いいえ」と回答した。「いいえ」が33ポイントも上回った。
ところが、「トランプ前大統領が罪で告発されるべきだと思いますか」と質問を変えると、50%が「はい」、45%が「いいえ」と回答した。「はい」が「いいえ」を5ポイントリードした。
議事堂襲撃事件に関する公聴会の最中に行われた米クイニピアック大学(東部コネチカット州)の世論調査(同年7月14~18日実施)では、「20年米大統領選挙結果を覆そうとしたトランプ前大統領は罪を犯したと思いますか」という質問に対して、50%が「はい」、44%が「いいえ」と回答した。6月22日に発表した同調査では47%が「はい」、48%が「いいえ」と答えたので、公聴会の間に「はい」が3ポイント増加し、「いいえ」が4ポイント減少して逆転したことになる。
トランプ氏は罪を犯しても告発されないが、「されるべき」と考えている―これが米国民の本音である。