2024年11月22日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年9月10日

 ここには、コメの検査をデジタル化し、生産から流通・消費までデジタル管理しようという狙いがある。具体策として「スマートオコメチェーン」というプラットフォーム作りを推進している。

 言い換えればデジタル技術を用いた新たなコメの管理方式を構築しようというものである。これまで掲載していた品位データに加え、コメの成分など多様なデータも示し、各農家が生産したコメの価値をさまざまな側面から高めることで需要を喚起する。特に外国産と〝日本米〟の違いをデータで示すことによって輸出用としての価値を認めてもらおうという大きな目的もある。

 大規模生産者で組織される日本農業生産法人協会がコメの検査コスト削減や合理化を要請したことや、国が農業の競争力を高めるために農産物の流通合理化や規制改革を推進する流れで農産物検査の見直しが盛り込まれ、コメの検査制度が大きく変わることになった。ところが、現場では真逆の結果を招いている。

生産者も検査官も煩雑な必要書類の数々

 農産物検査法の改正点は多岐にわたるので、ここでは未検査米の扱いに焦点を絞って言及してみたい。

 これまで農産物検査官が検査しないで流通するコメは「未検査米」と呼ばれて安価で流通・消費されていた。その数量は決して小さくはなく、おおよそ120万トン、全体の流通量の約2割を占めている。これだけの量が銘柄などを明記して付加価値を付けられる可能性が出てきているのだから、コメの集荷業者・検査官が改正後どのように扱っているのか気にするのは当然とも言える。

 具体的な22年産米からの銘柄検査方法は、農業者等から提出される種子の購入や栽培の記録により審査するものとになった。提出資料は①どのような種苗を用いて生産されたか分かる資料(種子の購入記録等)、②全体の作付け状況及び品種ごとの作付状況がわかる資料(営農計画書等)、③その他登録機関が必要と認める資料――となっている。生産者からこうした書類が提出されれば、それを担保にして目視検査を受けなくても銘柄表示が出来るということになる。

 一見すると検査が簡易になったようにみえるが、これまで検査を受けず未検査米としてコメを出荷してきた生産者が種子の購入記録や営農計画書などをどこまで残しているのかという問題がある。コメ農家の中には種子を購入せずに自家採種している生産者も一定数存在する。そうした生産者にはさらなる提出資料を求めている。  

 生産者が銘柄を担保するための申請書のひな型があっても良さそうなものだが、そうしたものはなく、検査登録機関は農家から確認出来る書類を提出してもらい、それをもとに銘柄を検査するしかない。

 これまで未検査米としてコメを集荷業者に買ってもらっていた農家は〝必要書類〟を保存していないことが多い。個人の小規模農家にいたっては書類の管理そのものが出来ていないという実情もあり、集荷業者から「銘柄を謳うので書類を持って来てほしい」と言われても対応できない。冒頭のコメ集荷業者が「他がどうしているのか?」と聞いてくるのもわかる。


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