2022年12月10日(土)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年9月10日

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熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 検査登録機関からも「種子購入伝票はじめ生産者に提出してもらう書類が増え、それに伴い保管書類が増えた」「自家採種の書類については、生産者が一昨年の伝票を探してくれるのか見通しが立たない。検査直前の説明であり、あまりにもバタバタ過ぎる」「機械鑑定については、コメを入れるのはフレコンバッグを想定していると思われるが、紙袋で請求が来た場合、QRコードの貼り付けなどに時間がかかる」――など、実業務に伴うさまざまな不満の声が上がっている。上記に示されたような書類を生産者から集めなければならないこと自体に無理があると言える。

コメのデジタル管理が現場の重石に 

 農産物検査法改正により縛りをかけ、新たな生産流通管理とデジタル化を実現したいという思いなのだろうが、そうした新たな仕組みによって現場は益々負担が重くなり、当初、国が示していた現場の負担軽減や流通の合理化とは真逆の方向に動いている。

 農産物検査法は、コメを統制していた食管法時代の遺物であり、その役割を終えている。実際に生産者も国も検査の合理化を目指しているのだから、農産物検査法そのものを廃止して、目視鑑定であろうと機械鑑定であろうと品質や銘柄を担保するのは民間が独自に行えば良いのではないだろうか。

 それが検査コスト削減や農産物流通の合理化という本来の目的を達成するだけでなく、それぞれの品種や品質に見合った価値で取引される市場が作られ、経済合理性の下でコメが自由に取引され、真に産業として発展する土台を築くことにもつながる。

  
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