――ロシア・ウクライナ戦争下でもサイバー戦が繰り広げられている。この戦争におけるサイバー攻撃をどう分析しているか。
ES まず、私たちは舞台裏で何が起きているのかを意識していないし、知らないということを忘れてはいけない。
次に、サイバー戦争の利点は「静かな戦争」、つまり匿名で気づかれずに実行できることである。それゆえ、その主な利点は戦争の準備と、開始、奇襲にある。
サイバー戦争と物理的な戦争の組み合わせは、サイバースペースでの取り組みの性質を変え、交戦しながらより戦術的になっていると見ている。
――シュタウバーCEOはイスラエルの8200部隊出身である。8200部隊とはどのような組織なのか。また、イスラエルではサイバーセキュリティー人材が次々と育成されているが、その要因はなにか。
ES 8200部隊は、イスラエル国防軍(IDF) の諜報部隊組織であり、情報収集の分野を担当している。当然ながら、部隊について多くを語ることはできないが、優秀な兵士と、部隊で開発されている先端技術が合わさって、イスラエルにとって圧倒的なインテリジェンスの優位性を実現している。
イスラエルでセキュリティー人材が次々と育成される背景には、国の置かれた立場と軍の中での優れた教育に加えて、他の要素もある。
イスラエルは中東の敵対的な環境の中にあり、近くにも遠くにも脅威がある。18歳の少年少女が兵役の一環として国の防衛の第一線に置かれ、その若さでそうした重要な活動の先頭に立つ。それに加えて、何事も達成可能であるというビジョンがあることで、自信と信念が生まれ、卓越性を追求させるのだ。
ハッカーの活動の最前線に置かれる日本
――日本ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが加速しているが、そこにサイバーセキュリティーの観点が不足しているようにも思える。ハッカーたちにとって「日本」という市場はどのように見られているのか。
ES 近年、日本市場に目を向けたハッカー集団のインテリジェンス(情報)が飛躍的に増えている。日本の隣国である中国などが積極的な活動をしていて、日本に関する情報を強く求めていることで、サイバーハッカーの活動の最前線に日本が置かれるというユニークな状況が生まれている。日本企業はこの変化に迅速に対応しているが、米国や欧州連合(EU)の水準にはまだ及んでいない。
日本企業は、インフラを最先端のクラウドやセキュリティー技術にアップグレードするという劇的な決断することで、サイバー攻撃に対処できる可能性が非常に高い。各国が4Gや5Gの技術に飛びつくのと同じようなことだ。日本の経営者のマネジメントや政府の支援、規制によって、企業の迅速な動きが後押しできると考えている。
私が懸念しているのは、クラウドホスティングやサービスプロバイダーのサポートを必要としている中小企業である。中小企業が支払える価格で高度なサイバーテクノロジーを利用できるようにすべきである。